質問バイアスの影響
質問文にバイアス(良いことだけ、あるいは悪いことだけを並べて回答を誘導する文章)を入れると、どの程度回答が誘導できるかを示す事例がありましたので紹介しておきましょう。
次は環境省が環境税について最近行った調査ですが、環境税のご利益を列挙する典型的なバイアス質問になっています。
>環境税は既にドイツやイギリスで導入されていますが、日本では最近、環境省が具体的な提案をしています。それは、平均的なご家庭で言えば、月額でコーヒー1杯分(180円)の課税となるものです。このような低い税率でも、家庭や企業が負担することにより、例えば、・森林整備520万ha分・太陽光発電50万戸分・風力発電1,820基分・エコ住宅90万軒分・エコビルディング3.3万棟分・クリーンエネルギー自動車35万台分の普及を後押しすることができます(※)。あなたは、この環境税の提案を受け容れますか?
| (回答) | ・ 受け容れる | : | 384 | (26.6%) |
| ・ どちらかと言えば受け容れる | : | 737 | (51.1%) | |
| ・ どちらかと言えば受け容れない | : | 168 | (11.7%) | |
| ・ 受け容れない | : | 82 |
( 5.7%) | |
| ・ わからない | : | 71 |
( 4.9%) |
( 環境省報道発表資料-平成17年12月5日-環境税に関するアンケート調査結果について.)
一方、内閣府が今年の7月に行った調査では、賛否両論を示した文章を読ませたあとで回答するバイアスの少ない方法で質問をしています。
>〔資料3をよく読んでもらってから質問する〕
〔資料3〕 二酸化炭素の排出量を減らすための方法として、環境税を導入してはどうかという意見があります。環境税は、例えば二酸化炭素の排出量または化石燃料の消費量に応じて課税するものとして議論されている税金です。導入されると、ガソリンや燃料を使って発電している電気の値段が高くなることにより、その節約の気持ちが強くなったり、省エネ型・低燃費型の製品や車などが選ばれやすくなったりする効果や、税収を活用した地球温暖化対策の後押しによる効果などに着目した施策として、様々な観点から検討されています。一方で、環境税が地球温暖化対策全体の中で果たす役割や効果が明確ではない、負担が家計・企業に広く及ぶこととなる、景気回復の足かせや企業の国際競争力低下など経済への影響が懸念される、などの指摘があります。
Q16 あなたは、環境税の導入をどう考えますか。あなたのお考えに最も近いものを1つだけお答えください。
(ア) 賛成 ( 8.4)
(イ) どちらかというと賛成 (16.4)
(ウ) どちらともいえない (35.5)
(エ) どちらかというと反対 (16.1)
(オ) 反対 (16.3)
わからない ( 7.3)
環境省調査は4件法(4段階で質問する)で、内閣府調査は5件法ですので直接の比較はしにくいですが、内閣府の「どちらともいえない」の半分が4件法だと「どちらかというと賛成」と答えると仮定すると(本当はもっと少ないと思われますが)、バイアスの少ない質問による賛成派は
8.4+16.4+35.5/2=42.55%
となります。一方、環境省調査の賛成派は
26.6+51.1=77.7%
ですので、35ポイント以上の違いがあります。環境省調査はネットをつかった調査で、その影響もあると思われますが、質問文のバイアスによって3割近く回答を誘導できることを示す結果だと考えられます。
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