『下流社会』を検定してみる
三浦展著『下流社会』(光文社新書)を読みましたが、サンプル数12人とか40人とかで議論がしてあるところが結構あって、どの程度結果が当てになるのか分からない部分が沢山ありました。そこで試しにいくつかの命題について復元したデータを用いて統計的検定を行い、内容の妥当性を調べてみることを試みました。
例えば、第5章は「自分らしさを求めるのは「下流」である?」というタイトルですが、この命題の根拠となるデータはp159の
| 上 中 下
----------------------
n | 12人 40人 48人
個性・自分らしさ| 25.0% 25.0% 41.7%
という表です。生活全般で大事にしていることについていくつでも自由に○をつけてもらう方法で質問をして、「個性・自分らしさ」を選んだ割合が表に示されています。階層意識が上の12人のなかでこの項目を選んだ人が25%、階層意識が下の48人のなかでこの項目を選んだ人が41.7%なので、「自分らしさ」を求めるのは下流だと推測されているようです。
この推測をカイ二乗検定で確認するために、まず割合のデータを人数のデータに復元します。サンプル数が書いてあるので簡単に復元できて
個性・自分らしさ\階層意識 | 上 中 下
----------------------------
○をした | 3人 10人 20人
○をしなかった | 9人 30人 28人
----------------------------
合計 | 12人 40人 48人
であることが分かります。これより「自分らしさ」に○をつけることと階層意識とが独立(関連がない)場合のクロス表をつくると
個性・自分らしさ\階層意識 | 上 中 下
----------------------------
○をした | 3.96人 13.2人 15.8人
○をしなかった | 8.04人 26.8人 32.2人
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合計 | 12人 40人 48人
となりますので、もとのクロス表とそんなに大きくは違っていません。
カイ二乗値={(上の表の値-下の表の値)の二乗÷下の表の値}の合計
という式を用いてカイ二乗値を求めると3.15となります。この場合カイ二乗値は自由度2のカイ二乗分布に従いますので、危険率5%で検定するときの棄却域は、カイ二乗値>5.99なのですが、カイ二乗値=3.15なので帰無仮説を棄却できません。つまり「階層意識と自分らしさに○をつけることには関連があるとはいえない」という結論になります。したがって三浦さんの推測は支持されませんでした。
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