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2006年4月 7日 (金)

社会的ジレンマとプライスの共分散法

社会的ジレンマというのは厄介な問題ですが、解決策を考える上でのヒントになるプライスの共分散法について紹介しておきましょう。

社会的ジレンマは、個人にとって不利な行動は全体にとって有益であってもなかなかとられないといった、個人の利益と集団の利益に食い違いがある場合に発生する現象です。公共財の供給や環境問題などの場合に典型的にみられます。

この問題は一般に解決が困難なのですが、社会の中に小集団がいくつか存在していて全体として一つの集団をつくっているような場合には、なんとかなる可能性があります。具体的な条件は次のようになります。

小集団の中に戦略Aをとる人と戦略Bをとる人がいて、小集団の中ではAがBよりも損だけど、小集団の平均利得を見るとAの沢山いる小集団の方がBの沢山いる小集団よりも平均利得が高いものとします。 このとき、小集団がいくつか集まった全体集団において、戦略Aの平均利得は戦略Bの平均利得を上回ることがあるかどうかを、数理生物学者のプライスという人が検討しました。その結果

   Cov(xi,ui)+E[xi(1-xi)Δui]>0

のときには、全体集団のなかでの戦略Aの平均利得が戦略Bの平均利得を上回ることが明らかになりました。これをプライスの共分散法といいます(Price 1970。証明は第二玉葉参照)。記号の意味は、
   xiは小集団Iにおける戦略Aの割合
   uiは小集団Iの平均利得
   Δuiは小集団IにおけるAとBの平均利得の差
   Covは小集団の人数niで重みづけた共分散
   Eは小集団の人数niで重みづけた重み付き平均

小集団のなかでAはBよりも損ということは
   Δui=uia-uib<0
ということになりますが、Aの割合xiと平均利得uiの重み付き共分散Cov(xi,ui)が十分に大きな正の値であるならば、Cov(xi,ui)+E[xi(1-xi)Δui]は正の値になる場合がありえます。このときには、全体集団でのAの平均利得がBの平均利得を上回りますので、人々が規範による強制や道徳的な圧力がなくても、自発的に戦略Aをとる可能性がでてきます。これがプライスの共分散法の含意となります。

この式は、そのための条件をしめしていますが、まず小集団内でのAとBの利得差は小さい(協力のコストが小さい)方が良いことが読み取れます。一方、Cov(xi,ui)が大きい方が良いことも分かりますが、この共分散はxiとuiの相関が高いほど大きくなりますし、xiやuiの分散(ばらつき)が大きくても大きくなります。xiが大きいほどuiが増える状況ではxiとuiは正の相関を持ちますが、それだけではなくて、xiやuiのばらつきも大きい方が良いことを共分散法の結果は示しています。  

逆にxiやuiのばらつきがほとんどないとxiとuiの相関が大きくてもCov(xi,ui)が0に近い値になりますので、Cov(xi,ui)+E[xi(1-xi)Δui]が負になる可能性が高くなります。この場合はAの平均利得がBの平均利得よりも小さくなりますので、社会的ジレンマは解決されにくくなります。

非協力的なB戦略よりも協力的なA戦略をとるコストが低いことや、A戦略が集団の平均利得を押し上げる効果が高いことが、A戦略を得にしやすいことは直感的にも理解しやすいですが、小集団間でxiやuiのばらつきがある程度以上必要であることは、こういう式を作ってみないとなかなかわかりにくい事柄です。このような含意が導けることが共分散法のご利益いうことになるでしょう。

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