中国鉄道大紀行 その82 幸せのお裾分け

10月22日は林口(りんこう)から勃利(ぼつり)、チャムスまで北上し、夜行で綏化(すいか)まで向かいます。
9:09林口発。周囲はまだらに雪化粧して所々に茶色い土が見えています。これから、稚内より北上するので、雪も段々分厚くなっていくでしょう。
列車の網だなに、大きな赤い包みが置かれているのを関口さんは見つけました。
「これはなんですか?」
「布団だよ」
春の旅でも出稼ぎにいく人が布団持参で列車に乗ってましたが、それにしても真っ赤な布団です。
「二人は新婚なんだよ」
「新婚さんは赤い布団で寝るの?」
「ええ、中国の習慣です」
赤は縁起のいい色とされ、おめでたい場面では赤を使うらしいのです。二人は奥さんの実家に挨拶にいく途中なのでした。よくみると奥さんも上下赤い服ですし、旦那さんもネクタイ、靴、靴下まで赤尽くしです。素晴らしいコーディネート。
「新婚さんは、靴下まで赤なんだ。」
「ひょっとしてパンツも赤??」
「ええ。赤です」
と、旦那さん。関口さん、大受けしてました。「赤いふんどし」だと日本でも耳にするのですが(見たことはないですが)、男性用の赤いパンツはちょっと見掛けませんね。徹底しています。
今度は奥さんが、飴を分けてくれました。これも中国の風習で、結婚したら飴を配るのだそうです。
「幸せのお裾分け♪」
いい光景です。関口さんも、ありがたく頂戴していました。
長白山のふもとを雪景色の中、ずんずん北上して、10:44勃利着。人口37万人、炭鉱と農業の街です。このあたりにも日本の開拓団が入植していて、「大地の子」の舞台になったりしています。
広大な落葉松林が風に揺れている中を歩いていると、「活口巴副食」と書いたお店がありました。関口さん、お昼ご飯を食べようと寄ってみましたが‥
「うちは食堂じゃないよ」
どうも雑貨店のようです。日本でも地方を歩いていると、日用雑貨や食品などを売ってるなんでも屋みたいなお店があるものですが、そういう店なのでした。
「でも、即席麺なら作ってあげるよ」
なかなか親切ですね。助かりました。関口さん、お店に卵があるのを見つけて、割っていれようとしました。するとお店の人はビックリして飛びのき、体をよじって恐いものをみるようにこちらを伺っています。
「どうしたの。なんで?」
「中国では生卵を食べる習慣がないんです」
とは通訳の陳さん。衛生上の理由か、魚とかも生では食べないようですが、それにしても凄いリアクションです。
「いいのよ。美味しいんだって」 「うまい!生卵超うま~~!!」
関口さんは、幸せそうでした。
13:41、勃利発。さらに北上していきます。今度の車内では、大きな花束を持った人達がいました。結婚のお祝いだそうです。今日は大安か何かなんでしょうかね。一人の女性が歌を歌ってくれました。
♪赤い布を腰に巻きましょう
♪幸運がやってくるように
♪健やかに若々しく
♪人生に幸があるように
軽やかな歌い声です。関口さん、またまた幸せのお裾分けを頂いてしまいました。
途中の駅で雪合戦している子供がいました。外はだいぶ寒そうです。年配の女性が話しかけてきました。
「その靴は日本からはいてきたの?」
「それでは寒そうよ。南に行くみたい」
確かに寒い地方の靴は、防寒がしっかりしています。足が冷たいのは辛いですからね。
「寒い方が得意なので大丈夫です」
と関口さん。ところでおばさん方、日本人と話をするのは初めてだそうです。
「外国人は特急しか乗らないから、ローカル線では会えないの」
「嬉しいわ」
少し幸せのお返しができたかもしれませんね。
16:58チャムス着。ここで西向きの列車に乗換えます。19:15、チャムス発。硬臥(B寝台)で綏化に向かいます。ハードな旅程ですが、幸せな出来事が沢山あって何よりでした。お疲れ様。
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