中国鉄道大紀行 その83 寒さの御利益

10月23日は綏化(すいか)からさらに北上して、富裕(ふゆう)からジャグダチに至ります。
昨夜、夜行で綏化について夜明け前の5:59に出発だそうですから、ほとんど降りずに出発したのかもしれません。人口500万人の大都市なので、色々発見もありそうですが、今回はパスです。気温は−2℃。厳しい冷え込みです。食堂車で朝御飯を食べていると、朝日が上ってきました。
東北地方の大平原が広がっています。山が見えない真っ直ぐな地平線が紫色に染まって日が上る風景を眺めながらの朝御飯、いいですねえ。いつか行ってみたいものです。この辺りは北大倉という大豆や米の穀倉地帯です。朝もやの中からやがて黒々とした大地が姿をま表しました。
寝台に戻った関口さん、こちらで農業指導をしている日本の専門家の方にお話を伺います。長さ3000mの農場を手作業で耕したり、ご苦労がおありですが
「見ての通り真っ黒の土でしょ」
「精々半年しか耕作できないんで、十分地力が残っとるんですわ」
とのこと。さらに
「冬は氷点下30℃になるでしょ」
「収穫終わったあと、天地がえししとくと天然の殺菌ができますし」
天地がえしは表土と深い所の土をひっくり返すことですが、そうすると虫の卵とかが寒さで死んで、夏場も虫が沸きにくいのだそうです。言われてみればそんな気はしますが、言われなければなかなか考えつかないことですね。
まあ、一口に天地がえしと言っても手作業でしょうから大変ですが、寒さのおかげで、肥沃な地力が残り、農薬も余り使わずに農業ができる訳ですから、思わぬ御利益があったものです。どこまでも続く黒土地帯が、偉大なものに感じられました。
12:36、富裕着。人口30万の農業の街です。「ふゆう」なんて面白い地名ですが、黒土の恵みで本当に富裕なのかもしれませんし、豊かになりたい願いを込めて名付けられたのかもしれません。
天気が良くて気温は16℃まで上がっていました。
「あったかいぞ」
ガラーンとした駅前の通りに、赤い絨毯を敷いた荷車つけた自転車が止まっていました。この地域の人力タクシーです。関口さん、早速乗ってみることにしました。
「何か面白い所連れてって下さい」
普通は自転車が前になって、後ろに客席を引っ張るのでしょうが、これは客の座席が前にあって後ろから自転車が押していきます。
「運転手より前なんて面白い〜」
客にお尻を向けないようにこういう配置になってるのだそうです。回りにも、同じような人力タクシーが行き交ってました。
ついた所は青空市場です。沢山露天に店が並んでいます。
「果物一杯〜、鶏一杯〜」
バナナなんて山積みにしてる店もありました。中に小鳥を置いてる店も。メジロみたいに緑がかった小鳥が籠の中でパタパタしてます。
「可愛いねえ〜」
なんて言ってると「買ったら〜」と言われてしまいました。
「今旅行中だから、だめ」
「籠に入れて持ってけばいいよ」
食い下がります。
「これから1ヶ月旅するし、籠持っていけない」
「毎日餌やれば大丈夫」
そういう問題ではないのですが、次々売り言葉が出て来るものですね。しまいには「途中で逃がせばいいよ」とか言われて、
「自分で逃がしなさい!」
関口さんもあきれてました。
この後、ブランコみたいな椅子のある喫茶店で、ホットコーヒーに氷を浮かべたアイスコーヒーを飲んで、14:57富裕発。果てしない黒土平原を列車は再びアリのように北に向かいます。夕暮れの平原を寝台車の座席からじっと見つめる関口さん。ジャグダチについたのは20:52でした。今日も長旅、お疲れ様!
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