中国鉄道大紀行 その87 石臼とヨーヨー


10月29日は碾子山(てんしざん)の採石場を訪ねたあと、楡樹屯(ゆじゅとん)から白城(はくじょう)まで内モンゴル自治区を移動します。
浄水作用を持つ不思議な麦飯石(ばくはんせき)は花崗岩(かこうがん)の一種で、碾子山の周辺には花崗岩の採石場がいくつかあります。郊外には、山肌を削られた所があちこちに見えました。
「山坡屯」とかかれた看板を過ぎて、舗装されてない道路を歩いていくと、切り出した岩がごろごろ置いてありました。関口さんが、近くにいる人に「岩のことを知りたいんですが」と尋ねると
「こっちにおいで。古い石臼があるよ」
という人が。行ってみると確かに石臼がごろごろしていました。一抱えほどの丸い石に溝が掘られて小さな穴が開いています。
「こっちが上、こっちが下。ここに棒を差して固定するんだ」
石臼はこの地方の特産品で、この辺りに住んでいる人はみな石臼職人だったそうです。でも最近は石臼の需要がなくなって、細々生産しているとのこと。そりゃ、いまどき石臼で小麦を挽く人もいないでしょうが、特産品の需要がなくなるのは、その地域の人にとっては致命的ですね。それで、麦飯石の湯飲みにシフトしているようですが、石臼の里の方はすっかり寂れていました。
最後の石臼職人というおじいさんの家を訪ねました。鶏がケコケコ歩いていて、可愛い子犬がお出迎えしてくれます。でも気温は5度。関口さんが寒そうにしてると、おばあさんがお湯を入れてくれました。関口さん、ほうじ茶のパックを入れて振る舞います。
「日本のお茶、どうぞ飲んで下さい」
おじいさん、ニッコリしてました。
「ガチョウもウサギも豚もいないよ」
「うちは何でもある家じゃないんだ」
なかなか生活は厳しそうです。
「でも、このうちにはおじいさんがいるし。その方がいいな」
なんて関口さん、おじいさんの事が相当気に入ったようでした。確かに穏やかでやさしそうな雰囲気を持ってらっしゃいます。
「こんな寒い所に、あったかい人がいました」
名残り惜しそうなおじいさんとお別れして、石臼の里をあとにします。
14:41、碾子山発。冬枯れの原野を楡樹屯に向かいます。関口さんが絵日記を書いていると、女の子が覗きこんできました。絵が好きなのかなと思って聞いてみると、そういう訳でもなくて、変わったことをしてる人がいるので見てたようです。
「何を一杯持ってるの?」
女の子が大きな荷物を持ってるので聞いてみると、色々見せてくれました。まずは銀色のイヤリング。耳につけて見せてくれました。おしゃれさんです。次はヨーヨー。懐かしいおもちゃがあるものですねえ。やって見せてくれようとしましたが‥
「アイヤー!」
なんと芯の所が壊れてしまっているようです。何とか直そうといじくってみますが、直りそうにありません。関口さんも見て見ましたが、中の部品が欠けているようで、無理っぽいです。でも女の子はあきらめません。
「このゴムでしばれば‥」
大きな荷物から輪ゴムを取り出して、欠けた部分を固定しようとします。
「これで直ったらビックリするよ」
何て言ってうちに本当に直してしまいました。勢いよくヨーヨーを回しても大丈夫です。
「君は偉い!」
凄い子です。ビックリしました。修理するってことは中の仕組みが分かってないとできないことですし、仕組みが分かると新しい工夫も生まれてきます。多分そんな才能を持った子供なのでしょう。自分でものを修理しなくなった今の日本では、育まれにくい才能でもあります。
ヨーヨーのあと、一緒に絵日記を見ているうちに、楡樹屯につきました。別れ際、女の子が関口さんに何かを手渡します。さっきのイヤリングです。
「くれんの?」
何と、大切なイヤリングをプレゼントしてくれました。こういうのは、ちょっと感動してしまいますね。
17:28楡樹屯着。列車の窓から手を振って女の子とお別れです。さらに乗換えて、22:17白城着。石臼とヨーヨーという、二つの丸いものが縁を結んだ一日でした。
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