中国鉄道大紀行 その93 時間の旅

11月6日は武威(ぶい)から張掖(ちょうえき)まで、河西回廊を旅します。いよいよ、シルクロードに入って来ました。
9:41、武威発。昨夜22:18に降りてすぐ、翌朝の出発です。ここで何かを見るためというより、これからの路線を昼間通るために昨夜降りたみたいですね。武威を出るとすぐに素晴らしい景色が展開しました。
南には遠く祁連(きれん)山脈の山並み。5000mを越える山々が白銀に光っています。この雪解け水が地下水となって、シルクロードのオアシスを潤します。
北には内モンゴル自治区のゴツゴツした山並みと茶色の平原。くっきりした青空と岩山のコントラストが、地球ではない風景のようです。それを食堂車でお茶を飲みながらゆったり眺める関口さん。いいですねえ〜! こういう旅をしてみたいものです。眼下に遠く羊の群れが通り過ぎていきました。マルコポーロの時代に帰ったかのような錯覚を覚えます。
車内では、小麦粉を丸く焼いた餅子(びんず)や、卵や胡麻を練りこんで焼いたナンを食べる人達。餅子は中国北部の主食、ナンはウイグル族の主食だそうです。どちらも美味しそう‥
車内外の風景を楽しむうちに、12:53張掖着。人口120万人。2000年以上前、漢の軍勢が河西回廊を抑える匈奴と戦った土地です。今も野菜の実りが豊かな土地として知られています。関口さん、郊外の農家を訪ねてみました。
ちょうど、タマネギの収穫の最中です。道端にうずたかくタマネギが積まれ、農家のおばさんが何人かで皮剥き作業をしてました。近くの飲食店に出荷するために、あらかじめ皮を剥いているのだそうです。それにしても丸々してて大きなタマネギです。
「日本のこんな大きかったっけ?」
一つ剥かせてもらいましたが、なかなか難しそうです。
「まだまだ、沢山あるわよ」
おばさんが隣りからギャッギャッとナイフを突き出して、器用に剥いてくれました。ちょっとこわいですけどね。
ひとしきり皮剥きをしたところで、近所の「とっておきの場所」に案内してもらうことになりました。
村の中を歩いていると、おばさんの知り合いと擦れ違います。
「あら、若い子なんかつれて」
「日本人なんだって。ちょっと案内してるのよ」
そんなことを言いながら15分ほど歩くと、何やら遺跡のような所に着きました。土で出来た壇の回りに土壁が築かれています。城壁と見張り台のようです。土壁を乗り越えて中に入ります。
「うわ〜まだあった」
「広いなあ〜! こんなに広いのか!」
城内なのでしょう。数百m〜1kmほどの空間が広がり、それを土壁がぐるりと取り巻いていました。
「壁しかないの?」
「昔、街があったけど残ってないの‥」
1800年前、後漢の時代に建てられた城なのだそうです。匈奴に備え、シルクロードの通商路を守る軍事拠点だったのでしょう。
「最近までここは誰も住んでなかったの」
「忘れられた場所なんだな」
5000人の城兵に守られた城は8世紀におそらくはウイグルの攻撃で滅亡し、それ以来1000年以上忘れさられていたのです。そう聞くと1000年昔の人馬のいななきが聞こえてくるような気がしました。
「なんかやっぱりこの旅は、時間も旅行しているような気がするね」
遺跡の真ん中に腰掛けて、関口さん、感慨深かげです。
「間違いなく、今じゃないものの所に、今いるんだもんね」
遺跡の土壁を越えた時、過去へタイムスリップしたのでしょう。さっきまでタマネギを剥いていたのが嘘みたいですね。空には昔の物見も眺めであろう、透明な夕焼けが広がっていました。
| 固定リンク

コメント