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2008年9月 4日 (木)

流入、流出の分析

学習確率の違いがサンクションの維持に思いのほか影響するらしいことがわかりましたので、そのメカニズムを少し調べてみました。

今回のモデルでは集団の中でSCがNCよりも大勢いると協力が維持されて高い利得が獲得できる一方で、SCがNCよりも少ないとサンクションが不十分なため協力が維持されず、したがって利得が低いことが仮定されています(ただし、集団の中ではNCがSCよりサンクションコストを負担しない分だけ常に得)。

そこで     

  SCの人数≧NCの人数の集団を「C状態の集団」
  SCの人数<NCの人数の集団を「D状態の集団」

と呼ぶことにして、「C状態の集団」が「D状態の集団」に学習や移住によって変わる確率と、「D状態の集団」が「C状態の集団」に変わる確率を求めてみました。前者をC状態からの流出率、後者をC状態への流入率と呼ぶことにすると、流入が流出より多い時にはC状態(協力が維持されている状態)が維持されやすいし、流入が流出より少ないときはC状態が維持されにくいと考えられます。

まず、学習確率を0.01に固定して集団間学習の割合を0.9~0.1まで変えて流入、流出率の変化をみると次のようになりました。

Photo 左のグラフのように集団間学習が減ると流出率がやや増える一方で、流入率が大きく減っています。C状態からD状態に変わるにはサンクションをかけていた人が集団内のサンクションをかけてない人をみて真似するとよいので、これは集団間学習の割合が減って集団内学習が増えると起こりやすくなります。

一方、D状態の集団がC状態に変わるには、サンクションをやめたために協力が維持されなくなった集団のNCが他のサンクションがまだ維持されている集団のSCをみてそれをまねする必要がありますので、集団間学習が減るとその分C状態には戻りにくくなります。このグラフでは流出と流入が逆転するのは集団間学習が0.5付近ですので、これを境にC状態が維持されにくくなったと解釈できます。

次に、集団間学習の割合を0.7に固定して学習確率を0.005~0.1まで変えてみたところ次のようになりました。

Photo_2 今度は学習確率があがっても流入率はあまり変わらないのに対し、流出率が大きく増えるという結果になっています。学習確率が上がるとSCがサンクションをかけないNCをみてNCになる確率が増すのでC状態からD状態への流出率が上がるのは理解できます。

同じ理屈でD状態からC状態に戻る流入率も上がりそうなものですが、こちらはそうでもありません。これはおそらく次のようなメカニズムになっているようです。つまり、D状態からC状態に戻れるのはD状態の中でもSCの割合が比較的NCの割合に近い場合に限られます。学習確率が増すとこのケースからC状態に戻る確率が増しますが、集団内学習のスピードも速くなるためSCの割合が0に落ち込んでいく確率も増すことになります。この両方の効果がおそらく打ち消しあうために、D状態からC状態に戻る確率はほとんど変化しないのだと考えられます。

そんなわけで、このケースでは学習確率が0.05を上回ると流出が流入を上回るためにサンクションの効いたC状態は維持されにくくなっているのでしょう。

これはこれで納得のできる結果ですが、その一方このモデルは学習というものがあまり速く進むと協力は維持されにくくなることを示しています。インターネットの発達が進み情報の伝達が速くなるというのは結構なことではありますが、結構なことばかりではない可能性も考えられますね。

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