正直者は馬鹿をみるか その2
目の前にいる人に貢献する<見える貢献>と、目の前にはいない人々に貢献する<見えない貢献>について、それぞれをする人としない人の利得を比較してみましょう。
今回は利得として、一ヶ月に自由に使えるお金、アルバイトによる収入、友人の数を測定しています。経済的な利得と社会的な利得の指標としてきいてみました。それぞれの単純集計は次の通りです。
Q あなたは1ヶ月自由に使えるお金はどの程度ありますか
1万円未満 8%
1万円~2万円 22%
2万円~4万円 31%
4万円~7万円 25%
7万円~10万円 9%
10万円以上 5%
(平均 4.1万円 標準偏差 2.9万円)
Q アルバイトによる1ヶ月の収入は何円ぐらいですか。
していない 31%
2万円未満 1%
2~4万円 8%
4~6万円 18%
6~8万円 18%
8~10万円 14%
10~15万円 7%
15~20万円 1%
20万円以上 2%
(平均 7.4万円 標準偏差 3.9万円)
Q あなたは日頃から付き合いのある友人が何人ぐらいいますか。
0~2人 8%
2~5人 30%
5~10人 36%
10~15人 16%
15~20人 6%
20~30人 4%
30~50人 0%
それ以上 1%
(平均 8.5人 標準偏差 7.7人)
1ヶ月に自由に使えるお金(可処分所得)は2~4万円という学生が最大ですが、平均は4.1万円となっています。アルバイトは69%の学生がやっていて収入は、4~6万円、6~8万円という学生がともに18%で最大となっています。中には20万円以上という学生もいて、平均は7.4万円でした。ちなみにアルバイトをしていない学生を含めて計算すると、平均アルバイト収入は5.1万円となります。このうち1万円を生活費などに回して、4万円強を可処分所得にするのがおおまかな学生の所得構造になりますね。
友人の数は5~10人が最大で36%、2~5人が次に多くて30%となっています。10人未満という学生が7割強を占めていて、この程度の人数が主な交友範囲といえそうです。
これらの経済的、社会的利得は<見える貢献>や<見えない貢献>の高低によって違いがあるのでしょうか。<見える貢献>として、「お年寄りに席を譲る」「困ってる人に声をかける」「何か社会に役立ちたい」の4点尺度の平均(α=0.66)、<見えない貢献>として、「献血する」「募金する」「冷房を控える」「使い捨て製品は避ける」の4点尺度の平均(α=0.61)をとり、可処分所得、アルバイト収入、友人の数との相関係数を求めてみると
見える貢献 見えない貢献
----------------------
可処分所得 0.02 0.02
バイト収入 0.00 -0.01
友人の数 0.17* 0.15*
となり、友人の数とのみ有意な相関がみられました。どうも社会貢献意識や社会貢献行動と経済的な利得とは関連がないようです。一方、社会的な利得である友人の数とは相関がありましたので、<見える貢献>、<見えない貢献>の得点でサンプルを高、中、低に三分割して友人の数を比較してみました。その結果は次の通りです。(友人数の平均±標準偏差を示す)
見える貢献 見えない貢献
----------------------
高 10.7±10.4人 10.0± 9.9人
中 8.0± 6.8人 7.9± 5.4人
低 7.1± 5.3人 7.5± 5.9人
標準偏差がかなり大きいので明瞭な結果ではありませんが、危険率10%程度で有意な違いが見られました。<見える貢献>については、貢献度の高い人は低い人より平均して3.6人、友人の数が多くなっています。<見えない貢献>については平均して2.5人の増加ですから、見える貢献の方が友人を増やす効果が若干大きいようです。
友人の数というのは、社会的なネットワークの大きさを示す指標で、楽しみの大きさや情報の多様性、困ったときのサポートの大きさと関連をします。サポートは受けることもあれば提供することもあるので差し引きの収支は自明ではありませんが、困ったときにサポートを受ける利益は一般にかなり大きいものですからまあプラスと考えられるでしょう。社会的な貢献性の高い人はこれらの利益を低い人に比べて友人3人分ほどたくさん享受できるといえそうですね。
友人の数の違いは選択的相互作用という観点から説明できそうな気がしますが、その辺は今後の課題としてさしあたり分かったことをまとめてみますと、社会的な貢献性の高い人は低い人に比べて経済的には損でも得でもありません。その意味では貢献のコストを埋め合わせる利益もありませんので「正直者は馬鹿を見る」といえるかもしれません。ただ、社会的な利得という点では友人と言う無形の財産を3人分ほど多く獲得できますので「正直者が必ずしも馬鹿をみるとは限らない」ということができそうです。
なお、見える貢献と見えない貢献の違いは利得についてはほとんど見られませんでした。友人の数について見える貢献の効果が若干大きかったので、見える貢献が社会的利得の増加を通じて見えない貢献の維持に結びついているという図式を描けるかもしれませんが、統計的に検証できるほどの違いではありませんので、その辺も今後の課題となりますね。
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