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2010年4月28日 (水)

寄付意図金額の規定要因

社会に役立つ活動に寄付をする機会があればどれくらいしたいか、という質問に対して月432円、可処分所得の1.1%が回答の平均であったことを紹介しました(2010年4月調査。サンプル数305人)。その中には月100円以下という人が4割いる一方で、月500円以上寄付したいという人もやはり4割程度存在します。ここではどのような人が社会に役立つ活動への寄付に消極的で、どのような人が積極的なのかをみていくことにしましょう。

まず、寄付したいと思う金額(寄付意図金額)と有意な相関のある項目を拾ってみると

  街頭募金には協力する   0.22
  なるべく社会に貢献したい 0.19
  プレゼントをするのが好き 0.14
  漫画に関心がある       -0.13
  ゲームに関心がある     -0.18

となっています。街頭募金への協力や社会への貢献意図との相関があるのは当然かもしれませんが、「プレゼントをして人が喜ぶのを見るのがすきだ」とも相関があるのはちょっと面白いですね。一方で、漫画やゲームへの関心とは負の相関がありますので、漫画やゲームが好きな人は社会に役立つ活動に寄付をしたいと思わない傾向があることを示しています。

漫画やゲームに関心があるのは男性に多いのですが、寄付意図は性別との相関はありません(r=-0.03)。漫画やゲームへの関心にはそれ自体、寄付意図を下げる効果があるようです。他に相関がなかった主な項目を挙げてみると、1ヶ月に自由に使えるお金(-0.08)、たいていの人は正直だと思う(0.06)、自分は人を信頼する方だ(-0.04)、災害や環境問題への関心(0.08と0.05)となっています。可処分所得とは相関がありませんし、一般信頼とも関連がないようです。一般信頼はN人協力傾向の指標としてよく言及されるのですが、寄付意図という形でのN人協力意図と相関がないのはちょっと困った結果ではあります。災害や環境問題という社会的な事柄への関心とも相関がないのもやや予想外でした。

次に「プレゼント」「社会貢献」「漫画」「ゲーム」と相関のある項目を加えて偏相関行列を作成してみました。偏相関係数は他の変数をコントロールして一定にしたときの相関係数で、これをみると偽相関や間接効果による相関ではない、直接の相関関係の候補を探すことができます。その結果、「社会貢献」や「漫画」と「寄付意図」との間の相関は他の変数をコントロールすると消えてしまう偽相関らしいことが判明しました。

このような方法で「寄付意図」と直接の相関があると思われる変数をピックアップし、さらにそれらの変数と直接相関があると思われる変数を拾っていきますと、「プレゼント」「ゲーム」の他に「性別」「誇り」(出身の中学や高校に誇りを感じる)「名誉侮辱」(自分たちの名誉が侮辱されることは我慢できない)、といった変数が残りました。これらの変数を用いてパス解析を行ったところ、最も適合度の良いモデルとして図のようなパスモデルが得られました。

Photo

「プレゼント好き」から「寄付意図」へプラスの直接効果が見られる一方、「ゲーム関心」から「寄付意図」へはマイナスの直接効果が見られます。それから「性別」と「寄付意図」にもマイナスの直接効果があることが分かりました。「性別」は男性を1、女性を2とする二値変数でパス解析に投入するのは本当はよくないのですが、結果を目安程度に見ることはできるでしょう。

女性を2とコードしたときのマイナスの直接効果ですから、女性の方が寄付に消極的だということになります。一方「性別」から「プレゼント」にプラスの直接効果があり、女性の方がプレゼント好きで、さらに「プレゼント」から「寄付意図」にプラスの直接効果がありますから、女性であることにはプレゼント好きを通じて寄付意図を高める間接効果があることになります。

また「性別」は「ゲーム関心」にかなり強いマイナスの直接効果がありますから、女性の方がゲームへの関心は低くなっています。「ゲーム関心」は寄付意図を下げますので、女性であることにはゲーム関心を下げることを通じて寄付意図を高める間接効果もあるといえます。この二つのプラスの間接効果が女性であることのマイナスの直接効果と打ち消しあって、性別と寄付意図との相関がなくなっていることがこのパス図から読み取れます。なかなか、舞台裏は複雑ですね。

「出身校への誇り」と「名誉侮辱は我慢できない」は「プレゼント好き」への直接効果があります。「寄付意図」への直接効果はないものの、プレゼント好きを介したプラスの間接効果があると思われます。「出身校への誇り」は「ゲーム関心」へのマイナスの直接効果も持ちますので、こちらのルートでも「寄付意図」を高める間接効果があると推定できます。

「性別」の効果が結局打ち消しあってなくなるのに対し、「出身校への誇り」の方は「寄付意図」に対し正味でプラスの間接効果を持つようです。このようにパス解析による分析の結果、誇りやプライドといった要素が社会に役立つ活動への寄付意図の規定要因となっていることが分かりました。<信頼>に比べて<誇り>が協力行動の促進要因として注目されることは少なかったように思いますが、<誇り>やその規定因といった問題についても今後は注目していくべきかもしれません。

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