【ゲゲゲの女房】 第59話 貧乏神現る
不渡りを出した富田書房の債権者会議はやはり連鎖倒産の出る厳しいものでした。なぜこんな苦境に陥ったのか特に描写がありませんので、原因は茂さんの本が売れなかったということなんでしょうね、やっぱり。
そうであれば富田書房に現れた貧乏神が茂さんの家についてきてしまったのも、いたし方ないかもしれません。なにしろ、あちこち持ち込みに回っても原稿料が値切られるばかりだったようですから。家財道具は次々質草に消えていき、ついにみやこ母さんが縫ってくれた青海波の着物まで質に入れられることになってしまいました。嫁入りの前に夜なべして縫っていたシーンで、これもいずれ質草に‥と思っていただけに悲しい展開です。
<たちわかれ因幡の山に峰におふる、まつとし聞かばいまかへりこむ>
布美枝さん、着物に在原行平のうたを書いて挟み込みました。質流れしないようにというおまじないなのだそうです。
「それは猫が帰ってくるまじないじゃろ」
と茂さん。初めて聞きましたが、境港方面ではそういうおまじないをするのでしょうか。うちの猫がいなくなったときにも、玄関に張っておけばよかったかもしれませんね。この辺は苦しいなかにもホッとさせられるやり取りでした。
それにしても税務署員の来訪といい、居留守ではなくて留守にして電気代の取立てを逃れたエピソードといい水木氏のこの時期の実話なんでしょうね。「ゲゲゲの鬼太郎」の中で貧乏神が猛威を振るう話がいくつか出てきますが、この頃の実体験に基づいて書かれているのでしょう。恐るべし、貧乏神。
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