【ゲゲゲの女房】 第105話 加納さんの苦悩
「悪魔くん」の放送開始は昭和41年10月6日。季節はすでに夏ですから2ヶ月たらずで放送開始となります。テレビ局が企画していた番組がぽしゃったそうで、急遽リリーフ当番となったようです。世の中そういう運も大事ですね。
茂さんの身辺もあわただしくなってきました。全国放送ですから、布美枝さんの実家の安来でも美智子さんのいる千葉でも見ることができます。すずらん商店街の皆さんのわくわくぶりもよく分かります。嵐星社の加納さんはこの機に「水木しげる大特集」を組んでゼタの部数アップを図ることを深沢さんに進言しました。
「水木さん、そんな暇ないんじゃないかな」
深沢さんは逆にテレビ化で忙しい間は茂さんの休載を考えているようです。そもそもゼタの拡大自体を深沢さんは考えていませんでした。新しい才能に自由に漫画を書いてもらう場。それが深沢さんのゼタ像です。部数を追うことは一般受けを狙うことになりますから、作家の自主性を枠にはめてしまうことになります。
「うちくらいは自由の砦でいたいじゃないか」
ゼタのモデルとなったガロは学生運動の空気を持った雑誌だったといいますから、そういう理念をもった経営方針だったのかもしれません。でも加納さんは才能発掘という裏方ではなく、日の当たるところで仕事をしたかったようです。
「そんなのつまらない」
深沢さんは「焦り」と表現してましたが、それよりは何を重視するかという価値観の問題といえるでしょう。加納さんも決断のときが来たようです。
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