【ゲゲゲの女房】 第84話 さらば、こみち書房!
調布に来たばかり布美枝さんを暖かく支えてくれた、こみち書房と美智子さんが千葉に旅立っていきました。物語前半終了といえるでしょう。昭和39年10月10日、東京オリンピック開会式の日の出来事でした。抜けるような青空を伝えるラジオのアナウンスが所々はいっているのがいいですね。まさに旅立ちの青い空です。
「先生、おれやってみるよ」
見送りにきた茂さんに政志さんが告げます。その晴れ晴れした表情に涙が出ました。長い間、シベリア抑留時の辛い思い出を引きずってきた政志さん。電気工の能力を買われ、ソ連側に優遇されたことで他の仲間から冷たい目で見られた日々。「好きなことに裏切られることもある」。その思いを茂さんにぶつけたとき、返ってきたのは「死んだ人間が一番かわいそうです」
という言葉でした。さぞ生きたかったろうに死んでいった仲間たち・・
「だから生きてる人間には同情せんのです」
「自分を可哀想がるのはつまらんことです」
これはなかなか言えない台詞ですね。茂さんの本領発揮です。原作はあえて読んでませんので、水木氏が本当にこうした言葉を語られたのかどうかは知りませんが、死地をくぐり抜けてきた人の言葉にはやはり重みがあります。せっかく生きて戻ったのに自分を可哀想がっていてはもったいないし申し訳ない。政志さんはこの言葉で蘇りました。
いなくなった美智子さんを探しにいくときの表情にはすでに生気が満ちていました。千葉で電気工をする決意を告げ、「本当に勝手ね」という美智子さんに「すまん」と頭を下げる政志さん。謝ることも頭を下げることも復員してから初めてだったのでしょう。その姿に美智子さんもこみち書房を千葉に引っ越す決心をします。その美智子さんに金メダルをかけるシーンでは本当に涙があふれました。いやあ、今日の一話はよかったです。前半のフィナーレを飾るにふさわしいエピソードでした。脚本家さんにも役者の皆さんにも金メダルを差し上げたいですね。
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