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2010年7月10日 (土)

【ゲゲゲの女房】 第90話 大きな賭け

 「今回は宇宙物でお願いします」

昭和40年(1965年)といえば、3月18日に人類最初の宇宙遊泳がソ連のボストーク号によって行われた年です。漫画の売れ筋でもあったのでしょう。少年ランドの豊川編集は宇宙物で32ページの読み切りを描くように、茂さんに依頼に来たのでした。

茂さんは一瞬応諾しかけたのですが、何かが頭をよぎったのでしょうか、すぐ首を振りました。

 「お断りします。宇宙物は苦手ですけん・・」

これも実話なのかどうか分かりませんが、実話だとすると水木氏の人生の大きなターニングポイントでしたね。せっかくの大手の依頼を断って浦木や布美枝さんは不満そうです。でも茂さんには茂さんの考えがありました。

 「チャンスは一回きりだからな」

苦手な宇宙物で失敗すればもうチャンスはきません。連載でなく別冊の読みきりですから本当に一作だけで評価されてしまいます。この仕事を受けるといつまでも貧乏暮らしだぞと貧乏神もささやいていました。幸い、豊川編集は本気で茂さんに描いてほしがっていました。そうであれば苦手分野で勝負するより、次の機会を待ったほうが得意分野で勝負できる確率があがる・・

この辺の判断は非常に難しいですね。豊川編集は本気でも少年ランドの編集会議は茂さんに二度とオファーを出さないかもしれません。無理に茂さんの企画を通してもらった豊川編集の立場が悪くなることもありえます。苦手の宇宙物を描いて成功する確率と、それを断ってもう一度オファーが来る確率。どちらが大きいかを一瞬のうちに見極めなければなりません。

もちろん正確に確率を見積もることなどできないでしょうから、直感とイマジネーションによる判断になります。貸本漫画から雑誌に移ろうとして失敗していった漫画家たち。自分のよさを発揮する機会をもてなかったはるこさん。「金を追う人生はつまらん。好きなことをしろ」といったイトツ父さん。描きたい漫画を描かせてくれる深沢さんの存在も判断を後押ししたかもしれません。そして自分に賭けようとしている豊川編集の目に茂さんも賭けることにしたのでした。

 「お断りします」

大きなチャンスをつかむには、大きな賭けに出ることも必要です。必ず勝てるわけではありませんが、茂さんには第2のチャンスがやってきました。

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