【ゲゲゲの女房】 第148話 名女房みやこさん
「お父さん、悪い手でしたねえ」
茂さんと碁を打つ源兵衛さんにみやこさんが声をかけました。
「無理に押したら、うまくいくもんもいけませんわ」
これはまさに絶妙の一着でしたね。正面からいうと「お前はだまっとれ」と言われるにきまってますから、碁を打って最中に、それも悪手を打ったタイミングで苦言を呈する。そうすると碁の話だと言い訳ができますし、ついでに茂さんにも意志を伝えることができます。
「確かにいい手とはいえんかったな」
「戦術を練り直して形勢逆転をねらいますかなあ」
藍子ちゃんに反抗されて茂さんもまずいと思ってたんでしょう。親の意志を押し付けるだけではうまくいかないと気がついたようです。ガキ大将に従うだけではなく、巧みに諌めてブレーキをかける。漢文の教科書に出てくる晏子(あんし)の話を思い出しました。
斉の国の王、景公が大事にしていた馬を飼育係が死なせてしまいます。怒った景公は飼育係を殺そうとするのですが、宰相の晏子が「きちんと罪状を言い渡してから死罪にしましょう」と提案しました。「よかろう」と景公。
「主君の愛馬を死なせたことは死に値する」
「主君に馬のことで人を殺させることも死に値する」
「主君が馬のことで家来を殺す人物だと世間に知らせることも‥」
「わ、分かった。この飼育係を許してやってくれ」
正面から意見をしたのでは、景公の怒りに火に油をそそぐばかりだったことでしょう。ものは言いよう。巧みに君主を諌めた晏子は管中と並び称される春秋時代の名宰相と呼ばれています。みやこさんはさしずめ「ゲゲゲの名女房」といったところでしょうか。嫁入り衣装に青海波を縫うみやこさんですから、本当に中国の古典を参考にしてるのかもしれませんね。
深大寺で藍子ちゃんに声をかけたところもうまかったです。どう切り出すんだろうと思っていたら「あんた安来節、しっちょるかね」。「千里も飛ぶよな虎の子が欲しや」という一節を引いて、千里先に嫁いだ娘を思う親心を伝えます。
「心配なんだわ。元気でやっとるか。今度はいつ顔見られるか」
虎のように千里を行ったりきたりできたら・・。藍子ちゃんにも茂さんの気持ちがようやく伝わったようです。本来、茂さんから言うべきことなのではありますが照れくさいんでしょうかね。かつてはイカルおばあちゃん、今度はみやこおばあちゃん、二人の祖母に助けてもらった藍子ちゃんは幸せ者です。先生の仕事は大変だけどしっかり頑張ってくださいね。
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