【みんなのうた50年史】 1962年8,9月のうた その1
『アルプス一万尺』
『川で歌おう』
『一、二、三、・・・』
『夏の思い出』
『アップアップアップリケ』
『アイルランドの子守歌』
『おなかのへるうた』
62年度第3クールは私の生まれたクールです。上の7曲が放送されていました。『アルプス一万尺』と『夏の思い出』がこのときの新曲だったんですね。ちょっと嬉しかったりします。『おなかのへるうた』もお馴染みの曲です。
♪ アルプス一万尺こやりの上で
♪ アルペン踊りを踊りましょう
『アルプス一万尺』は有名な割りに謎の多い曲です。「アルプス」は日本アルプスのことで「一万尺」(約3000m)はその高さのことだというのはWikipediaに記されている通りです。「こやり」は槍ヶ岳の山頂付近にある高さ30mほどの切り立った岩峰で、てっぺんには一人がようやく立てるスペースがあるのみだそうですね。人が一人立てるだけの30mの塔の上に立つことを想像するだけで足がすくみますが、そこでアルペン踊りを踊る。
四方に北アルプスの大パノラマが広がり、ひょっとすると想像を絶する爽快さがあるのかもしれませんが、「踊りましょう」と言われてもなかなかできることではないでしょう。Wikipediaによると『アルプス一万尺』の歌詞は29番まであり、その中には山の美しさや山男の心意気を歌ったもの、恋の嘆きを歌ったものがあります。あとは山歩きの途中やテントの中で交わすジョークのような歌詞で、1番の「アルペン踊り」や2番の「蚤の富士登山」も山のジョークと解するのがいいかもしれません。
ちなみに一万尺の元歌はアメリカ独立戦争で歌われた愛国歌"Yankee Doodle"で
♪ ヤンキードゥードゥル 子馬に乗って
♪ 街へいったよ
♪ 帽子に羽をつけた洒落男!
というふうな歌詞です。Voice of Americaのオープニング音楽にも使われてました。山の歌は替え歌の一種なのでしょう。
♪ 殷周春秋戦国秦漢魏呉蜀
♪ 南北隋唐五代宋元 ヘイ!
という替え歌も受験界では知られています。
『夏の思い出』は<みんなのうた>の前身である<ラジオ歌謡>で最初に紹介されました。1949年6月13日が初回放送だそうです。1949年といえば戦時中に中断されていた尾瀬沼の取水工事が再開される一方、「尾瀬保存期成同盟」(のちの自然保護協会)による保護活動が開始されていた時期です。『夏の思い出』は直接、保護活動のために作られたわけではないようですが、この歌のヒットで多くの人に尾瀬の美しさが知られるようになりました。
♪ 夏が来れば思い出す
♪ 遥かな尾瀬遠い空
一拍目の裏から静かに流れ出すメロディが尾瀬の遠景を描写します。AABA’形式16小節の短い曲ですが前半8小節が遠景から近景に向かう舞台設定に当てられています。ちなみにこの歌ができたころには木道はなくて「野の小径」は本当に小さな道でした。
♪ 水芭蕉の花が咲いている
♪ 夢見て咲いている水のほとり
一気に水芭蕉をクローズアップしたと見る間に二度の八分休符。そして夢見るようなリタルダント。間の取り方、緊張と弛緩の対比が絶妙ですね。
再現部は強拍から赤紫色の夕暮れが視界一杯に広がってフェルマータ・・! それが記憶のかなたにフェードアウトしていきます。短い中によくぞこれだけ、というように後半8小節は技巧が尽くされていました。前半の静と後半の動の対比まで含めて16小節に凝縮された名曲です。
長くなりました。あとの曲はまた後日としましょう。
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コメント
私の一押しは『川で歌おう』です。
インドネシア民謡で明るい曲調が好きです。
♪そよふく風 飛び散る 水のしぶき
声あわせて 歌おうよ 川の歌を
お空にゃぽっかり 白い雲
さあ みんなで歌おう 川の歌
ラサ サヤン ゲ
ラサ サヤン サヤン ゲ
さあ みんなで歌おう 川の歌
原題は『ラサ・サヤン・ゲ』です。
「お空にゃぽっかり 白い雲」という歌詞が、とても印象的です。(*^-^)
投稿: るんるん | 2011年12月 7日 (水) 18時33分
「ラサ・サヤン」いいですね。ソノシートに入ってるのを入手できました。元気一杯の歌声が水のしぶきのように弾ける曲です。
マレーシアの人が歌ってる映像もネットに上がってました。原曲は美しい乙女に憧れる気持ちを歌った作品みたいですね!
投稿: くじょう | 2011年12月 8日 (木) 22時22分