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2011年2月14日 (月)

大学教育と一般的信頼

WVSデータを使って学歴や所得や社会階層と一般信頼との関連をしらべると、学歴の直接効果が顕著で所得や階層は直接効果を持たないか弱い効果のみ持つという結果がだいたい得られます。この学歴の効果に焦点を当てた論文が最近出てました(J.Huang et al. 2010)。

これはイギリスの大規模コホートデータ(National Child Developing Study. イギリスで1958年に生まれた17409名を2000年まで6波に渡り追跡調査)を用いて、大学進学の一般信頼に与える影響を調べたものです。

この対象者のうち14.8%が大学を卒業しているそうですが、大卒か否かが一般信頼に与える影響を分析すると大学教育そのもののもつ直接効果・間接効果と、大学進学に伴う選抜効果(ある程度の成績や経済力が進学に必要だがそれらが一般信頼と相関する)の合わさったものが普通は得られます。

その点、このコホートデータでは大学進学以前の義務教育段階の成績や家庭環境がわかりますので、これらをコントロールすれば正味の大学教育の影響を知ることができます。そのような方法で義務教育段階の成績や家庭環境を揃えて比較すると、大学教育は一般信頼を7.5ポイント高める(大抵の人は信頼できると答える人が7.5ポイント増える)ことが判明しました。イギリスの一般信頼は2006年で31%ですので顕著な上昇と言えるでしょう。

この7.5ポイントの上昇をさらに、大学教育が所得や社会階層を上昇させることによる効果と、人間や社会に対する認識が変化することによる効果に分解することも試みられています。それによると経済社会的地位の上昇による効果が全体の23%、人間や社会に対する認識の変化による効果が77%を占めるという推計結果が得られていました。

経済社会変数より心理変数の方が一般信頼と関連が大きいのは予想がつく話ですが、その点を割り引いても大学教育が人間や社会に対する認識を変えること(具体的には他民族に寛容になり、厳罰を必要とする意見が減り、社会システムへの信頼が増すなど)による効果が大きいことが伺われます。

イギリスという一国の限られたコホートについてのデータですので、大学教育の効果の一般性については保留が必要ですが、貴重なデータを用いた非常に興味深い結果だといえるでしょう。

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