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2011年7月29日 (金)

狭義の一般的信頼の生成メカニズム

一般的信頼とは直接の面識がない一般的な他者を善意のある(少なくとも悪意のない)存在とみなす態度や考え方であることを見てきました。また一般的信頼を主に他者に対する認知のレベルの現象とみる考え方(狭義の一般的信頼)と社会参加まで含めた行動レベルの現象と見る考え方(広義の一般的信頼)があることも見てきました。ここでは、こうした一般的信頼が生成するメカニズムについて考えてみることにしましょう。

まずは認知レベルの一般的信頼について、一般的な他者を悪意のない存在と「みなす」態度はどのようにして形成されるのでしょうか。直接の面識のない他者についての情報は比較的限られます。こんな人がいる、あんな人がいたという伝聞による間接情報と、こんな人に会ったことがあるという初対面の相手とかかわったときの直接経験が主な情報源となるでしょう。これらの情報に加えて、世の中こんなものだという価値観や世界観から一般的な他者に対する認識が形作られてくると考えられます。

個別の情報と価値観との関係は厄介で、個別の情報によって価値観が変化する、あるいは更新されるということもありますが、価値観に沿って個別の情報を解釈することも多々見られます。ある人の行動の背後に善意を読み取るか悪意を読み取るか、あるいはやむをえない事情を読み取るかは、読み取り手が楽観的、悲観的、あるいは運命論的な価値観を持つかどうかに左右される面が大きいでしょう。

ウスラナーは一般的信頼を見知らぬ人の行動の背後に善意を読み取るような価値観の一種であり、それは幼年期~青年期の教育によって形成され生涯を通じて維持されると主張しています。回帰分析を行うと教育年数は多くの場合、一般的信頼の最大の規定因になりますので確かにそういう側面もあるようです。

ただ、ウスラナーが引用しているパネル調査のデータをみると一般的信頼の安定性はそれほど磐石ではなく、3~4割の人は時間の経過に伴って回答を変えています。WVSの日本のデータでは若年層は一般的信頼が高く、年齢が上がるにつれて低信頼になっていきますが、これも経験によって一般的信頼が変化することを示唆しています。

一般的信頼が経験によって変化する場合には、見知らぬ人との楽しく有益でポジティブな交流は一般的信頼を高める作用を持つでしょうし、騙されたり裏切られたりといったネガティブな体験は一般的信頼を損なう作用を持つでしょう。口コミやマスコミの報道で見知らぬ他者に対する良い印象や悪い印象が形成される場合もあるでしょうけど、間接情報で良い印象を持っていても直接の体験が悪ければ一般的信頼は下がると思われます。逆に間接情報で悪い印象を持っていても直接の体験が良ければ一般的信頼は改善するかもしれません。

このように直接見知らぬ人と接する機会があれば、そのときの体験は間接情報による印象形成より大きな効果を持つと予想されます。もちろん、間接情報による印象が余りに悪ければ見知らぬ他者との接触自体を避けるかもしれませんので、接触の機会があるならばという留保をつける必要はあるでしょう。

以上から、初期の教育で楽観的な価値観を獲得し、見知らぬ他者との実際の交流でもポジティブな体験が多く、ネガティブな事態にあまり遭遇しないことが一般的信頼を形成し維持していく上で必要であると考えることができます。

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