« 小松左京さん死去 | トップページ | みんなのうたナイト 第二夜 »

2011年7月28日 (木)

『熱狂、恐慌、崩壊:金融恐慌の歴史』

キンドルバーガー著『熱狂、恐慌、崩壊:金融恐慌の歴史』(2000. 吉野、八木訳2004. 日本経済新聞)を読みました。金融史というか金融恐慌史のお勉強ですね。一般的信頼と経済成長の関係について調べる一環として金融史のお勉強をしかけているのでした。

この本は金融恐慌史に特化しているだけでなく、メカニズムを詳述しているのが特徴ですね。物を使うために買うのではなく、転売して利ざやを稼ぐために買う行為が投機ですが、多くの人がそれを始めると投機の対象(債権や株式や土地やマンションやチューリップ)の価格が上昇してさらに多くの人が投機に参加するようになります。

このとき、手持ちの資金を投じるだけではなく人々が借金をして投機に参加するようになると投機は熱狂の域に達します。それも担保のある借金をしているうちはまだいいのですが無担保で借金をする(=ろくな担保もないのに銀行なり他の金融業者が融資をする)ようになると、病膏肓(こうこう)に入ると言わざるをえなくなるなってきます。

このように投機が加熱して初心者も投機に参加するようになると、そろそろ値上がりもピークでプロの投機家は売り抜けて利ざやを確保するようになります。借金で投機に参加している人は値上がりが止まると借金の利子を払えなくなります。下手をして値下がりが始まると元金も返せなくなるかもしれません。そこでその前に売ろうとする人が現れると実際に値下がりが始まってしまいます。

値下がりが進むと損をするのでその前に売りたいのですが、こうなると買い手がほとんどつきません。価格は暴落をはじめ、さらに多くの人が売ろうとします。資金を融資していた金融業者も回収を急ぐので、返済を迫られた借り手は投げ売りを余儀なくされます。暴落に直面して多くの人が我先に売ろうとする状況がパニック(恐慌)ということになります。

不十分な担保で貸し出しを行っていた銀行は債権を回収できず、不良債権の山に苦しむことになります。銀行の倒産の恐れが生じると預金者は預金を引き出しに殺到し取り付けが起こります。一昔前の金融危機ではこうして多くの銀行が倒産し、企業は貸し出しを受けることができなくなり、倒産したり経済活動が停滞したりして不況に陥ったケースもままあります。

本書は金融恐慌の歴史を年代順に追っていくのではなく、熱狂、恐慌、崩壊のフェイズごとに数多くの事例を紹介している点に特徴があります。それぞれの金融危機の事例を知っている人にとっては斬新な書き方なのだと思いますが、ミシシッピバブルや1825年の危機、 1873年の危機、ベアリング危機…と言われてもピンとこない初学者には多少読みにくい本という印象がありました。最後までいく頃にはどの事例もお馴染みになりましたけどね。

これらの危機が生じたときに銀行や企業を救済すべきかどうか、するとすれば誰がどのようなタイミングですべきかというのが本書後半のテーマでした。結論からいうと、投機に興じた銀行や投機家が破産する程度に遅く、それ以外の銀行や企業に危機が波及して不況が深刻化するのを防げる程度に早く十分な資金提供を「最後の貸し手」が行なうべし、というのがキンドルバーガーの意見のようですね。投機家とそれ以外を見分けるのはいうはやすく行なうは難しですが、理屈としては納得できる話です。

最後の貸し手は通常は中央銀行ですが、一国で手に負えないときは外国に援助を求めることになります。このとき国際的な最後の貸し手の引き受け手が現れるか否かが国際的な金融恐慌を克服できるかを左右するだろうというのが最終的な結論となっていました。

サブプライムからリーマンショックに至る第二次大収縮以前の本ですが、今回のそして今後起きるかもしれない事態を的確に見通した本と言えるでしょう。

|

« 小松左京さん死去 | トップページ | みんなのうたナイト 第二夜 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/121873/52334046

この記事へのトラックバック一覧です: 『熱狂、恐慌、崩壊:金融恐慌の歴史』:

« 小松左京さん死去 | トップページ | みんなのうたナイト 第二夜 »