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2011年8月 9日 (火)

【みんなのうた50年史】『勇気一つを友にして』 (1975年)

無事旅行から帰ってきたところで、50年史を再開しましょう。70年代の続きです。1975年10-11月の新曲は『勇気一つを友にして』『遠い世界に』『河』『リンリン』の4曲でした。このうち『勇気一つを友にして』は小学6年の音楽の教科書にも載ってますので今でも知っている人が多いことでしょう。

♪ 昔ギリシャのイカロスは
♪ ロウで固めた鳥の羽根
♪ 両手に持って飛びたった

ご存知イカロスの翼を題材とした作品ですね。クレタ島のミノス王に高い塔の上に幽閉されたイカロスと父ダイダロスが、ロウで固めた鳥の羽根を両手につけて脱出を試みます。

鳥の羽根を手につけたぐらいで飛べるのか、塔の上でかき集めた羽根やロウで十分なのか。半信半疑のままイカロスは高い塔の上から大空に飛び出ちました。勇気一つを友にして。

♪ 丘はグングン遠ざかり
♪ 下に広がる青い海

全曲の中で一番高揚感のある部分です。飛べることが分かるとこんな楽しいことはないですね。初めて見る空からの風景の数々にイカロスはワクワクしたことでしょう。

♪ 両手の羽根を羽ばたかせ
♪ 太陽めざし飛んでいく

イカロスの次の行動に多くの人が苦言を呈しています。事前にダイダロスはイカロスに太陽に近づきすぎると、ロウが溶けてしまって危険だと警告してました。父の警告に耳を貸さずに危険を犯す行為は勇気ではなく蛮勇だと。

しかし、ダイダロスも過去に空を飛んだことがあるわけではなく、太陽に近づくと危険だという警告に経験的な根拠はありません。もしイカロスが山に登ったことがあれば高度が上がるほど気温が下がることを知っていたことでしょう。気温が下がればロウも冷えるはず…

「父さんはああいうけど、本当は大丈夫なんじゃないか」

「いけるところまでいってみよう!」

太陽はアポロンの統べる神々の領域に属します。そういう未知の領域に足を踏み入れる千載一遇のチャンスが訪れたのです。イカロスは危険を承知で羽ばたきました。勇気一つを友にして。

♪ 赤く燃え立つ太陽に
♪ ロウで固めた鳥の羽根
♪ みるみる溶けて舞い散った…

しかし、イカロスの挑戦は悲劇に終わります。想定を越える太陽の熱線に、ロウで固めた翼はやはり溶け落ちてしまいました。上空高くで翼を失っては手の打ちようがありません。墜落したイカロスはあえなく命を失ってしまいます。

主人公が死ぬという衝撃的な結末はみんなのうた1300曲の中でも珍しいですね。お父さんやおじいさんは結構亡くなるのですが、若い主人公が死ぬのはこれ1曲かもしれません。毛利さんの描く白目の子供と合まってこの歌をトラウマソングにしている人も多いようですね。

♪ だけど僕らはイカロスの
♪ 鉄の勇気を受け継いで
♪ 明日へ向かい飛び立った

もとのギリシャ神話ではイカロスは忠告に従わなかった愚か者ということになっているようです。でも、作詞者の片岡輝(ひかる)さんはこの話をリスクの中に可能性を見出した物語として再構成しました。単にリスクを犯すだけなら蛮勇のそしりを免れませんが、上空ほど寒いことをイカロスが知っていれば冒険は根拠のある挑戦に変わります。危険があることに変わりはありませんが、リスクを取らなければ結果を出すこともできません。

もちろんやすやすと結果が出るほど世の中甘くないことを、イカロスの運命は示しています。それでもなおリスクを取って挑戦する勇気。リスクを恐れて立ち止まるどこかの国に、最も必要とされるものかもしれませんね。


『勇気一つを友にして』
作詞:片岡輝
作曲:越部信義
編曲:越部信義
うた:山田美也子、東京放送児童合唱団
映像:毛利厚
初回放送:1975年10-11月

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コメント

 なるほど、この曲も主人公が死んでしまう結末だったのですね。曲のイメージは力強くて〝死〟ということにあまり直結しないような感じで受け取っていました。
 私は、この歌を歌った「ステージ101」でヤング101の一員として活躍した山田美也子さんに思い入れがあります。初恋天使さんも同い年同学年なので、高校生の頃に「ステージ101」を夢中になって試聴していた世代です。彼のサイトでも大々的に紹介されている番組です。
 実は「みんなのうた」には、この「ステージ101」に参加した当時のメンバーが随分とかかわっています。歌唱だけではなく、作曲や編曲などにも大勢のメンバー(出身者)が関わっているのです。
 メンバーの一人だったピコこと樋口康雄さん(遠い海の記憶~少年ドラマ「つぶやき岩の秘密」主題歌の作曲者)のサイトに私が調べた結果を提供したりもしました。
 いま思いつくメンバーを少しだけ紹介しておきます。
 清須 邦義、芹澤 廣明(河内 廣明)、総領 泰則、高野 美千代、温 碧連、諏訪 マリー、上條 恒彦、高橋 キヨシ、田中 星児、若子内 悦郎、谷川 浩子、太田 裕美

投稿: るんるん | 2011年12月10日 (土) 20時52分

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