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2011年8月27日 (土)

知人信頼の規定要因

一般的信頼が知人に対する信頼の延長である可能性を見てきました。繰り返し囚人のジレンマ(PD)における戦略の1回きりPDにおける使い回しや、知人に対して共感を感じる心理機構を初対面の相手にも適用する可能性が、具体的なメカニズムとして想定されるでしょう。

知人に対する信頼は、ある程度安定した人間関係のもとで培われると考えられます。困ったときにお互いに助け合ったり、協力して何かを成し遂げたりする経験を積み重ねると信頼関係が深まるでしょう。逆に社会的な移動が頻繁で、長い付き合いが期待できないときには相互援助が行われないかもしれません。あるいは相手を裏切ることで大きな利益が得られる機会がたまに訪れる環境では、そのときに裏切られてしまうかもしれません。そのような場合には知人といえども油断はできないことになるでしょう。

このように知人に対する信頼も社会条件の影響を受けると考えられますが、実際にどのような要因が影響を与えているのでしょうか。世界価値観調査第5波の知人信頼のデータと国連開発計画が出している人間開発指標のデータを用いてさぐってみることにしましょう。48カ国について知人信頼の他に一人当たりGDPやジニ係数、政治的な安定性や司法システムの状況、政府の効率や汚職や収賄の度合いについてのデータが得られました。

これらを説明変数、知人信頼の指標を目的変数としてパス解析を行い、有意だった変数のみを取り出してパス解析しなおした結果、次のようになりました。ちなみにこの場合、説明変数間に強い相関がありますので普通に重回帰分析を行うと多重線形性が強く現れてよく分からないことになります。そこでパス解析をした結果が次の図です。

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対数変換した一人当たりGDP、ジニ係数、政治的安定性のスコア、法と秩序スコア、汚職の少なさを示すスコアがそれぞれ有意となりました。ある程度、納得の出来る変数が並んでいますが、パス係数の符号には予想外のものがいくつかあります。係数の絶対値が大きいものから見ていきますと、政府の汚職の少なさのスコアが最大の規定因のようです。汚職が少ない国では知人信頼が高く、汚職の多い国では知人信頼も低くなる傾向があるといえそうです。

政府関係者の知り合いから袖の下を要求されたりすると、確かに知人も信じられなくなるでしょうね。ただ、そういうケースはそんなに多くないかもしれません。汚職の横行している国では、人間一般に対する信頼が低くそれが知人信頼を引き下げるというケースの方がありそうです。その場合は、一般的信頼→知人信頼という因果パスが見られるのかもしれません。

次にパス係数の絶対値が大きい変数はlog(GDP)、すなわち対数変換した一人当たりGDPです。この係数はマイナスですので、一人当たりGDPが大きく経済発展が進んだ国では知人信頼が低いことになります。これはちょっと意外な結果ではありますが、経済発展が進むと社会の流動性が高まって知人との付き合いが途絶えやすくなるのかもしれません。あるいは、裏切りによって大きな利益が得られる機会が生じるため知人といえども信頼できなくなるということかもしれません。

ただ、社会関係資本の議論では信頼は経済成長を促進する働きを持つということがよく言われますので、こうした議論との整合性を考える必要がありそうです。

次に影響の大きな変数はジニ係数で、これもマイナスに効いています。ジニ係数は経済的な不平等の大きさを示す指数ですので、不平等が大きいほど知人が信頼できなくなることを意味しています。一攫千金の機会を狙って知人を裏切る‥という機会が増えるのかもしれませんが、マイナーケースのような気もします。これも格差の拡大が人間一般についての信頼を損ない、それが知人信頼を損なうという因果パスが効いているのかもしれません。

政治的安定性スコアはプラス、法と秩序スコアはマイナスに効いています。これらも知人信頼に影響するメカニズムが分かりにくい変数です。第3変数を介した偽相関かもしれませんし、一般的信頼を介した間接効果かもしれません。

詳細は不明な部分が多いですが、知人信頼→一般的信頼という因果関係だけでなく、逆の因果関係があるらしいことが伺える結果といえるでしょう。

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