『ゲーム理論による社会科学の統合』ハーバート・ギンタス 2011(=Gintis 2009)
今日は一日ギンタス先生の本を読んでいました。もちろん到底一日で読める本ではないのですけどね。あちこち拾い読みして、相関均衡の概念をゲーム理論を社会科学の分析に適用するときの主要な武器にしようとしていること、そこで必要となる「共有知識」が成立する条件を特定しようとしていること、さらに共有知識成立に必要となる人間の認知特性を遺伝-文化共進化の産物としてとらえようとしていることが伺えました。
何らかの(おそらく社会的な)「振付師」の存在によって、プレーヤーが逸脱の誘因をもたない相関均衡が成立し、それが通常のナッシュ均衡よりもパレート改善を可能にする…という話はタカハトブルジョアゲームからもうなずけるところです。ギンタスは社会規範の存在意義を相関均衡を可能にする「振付師」としての機能に求めているようです。
まあ、総論レベルでは特に異存はないですね。各論としてギンタスは認識論的ゲーム理論を用いて「振付師」を共有するメカニズムを定式化しようとしています。共有のプロセスを扱うには認識ダイナミクスのモデルがあるといいのですが、今のところ適当なモデルがないようで静学的な認識モデルが使われています。
総じて、この本には動学モデルは出てきませんね。「合理性」概念の拡張にギンタスの関心があるからかもしれませんが、分厚い進化ゲームのテキストを書いてる人なので少し残念です。動学というより認識論的ゲーム理論を社会科学全般を基礎付ける行動理論にすえる試みの本といえるでしょうか。先は長そうですが、それはそれで興味深い試みです。
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