定住生活のはじまり
日本の歴史01 『縄文時代の生活誌』岡村道雄 2002 を講談社学術文庫で読んでいます。10年ぐらい前の少し古い本ですがなかなか面白いですね。
寒冷な旧石器時代の遊動生活から、1万2000年ほど前に温暖な時代になると定住生活がはじまります。移動のコストが節約できるので定住生活の方が楽かとは思いますが、大型動物の狩りが主体で、植物性食品の層が薄かった旧石器時代には植物性の食べ物が不足して獲物が移動してしまうと、移動するしかありません。
温暖になり植物性の食べ物が豊富になると定住が可能になります。定住するとドングリなどの堅果類を割って食べるための石器や煮炊きするための土器を作って家に置いておくことができるようになります。さらに堅果を貯蔵する穴も家の中に掘ることができて食料の不足期にも移動しないですごすことも可能になります。
西アジアで自生小麦を食べるために石臼などを装備したナトゥフィアン文化の人たちも、定住生活に入って始めて重い石の道具類を使うことができるようになり、道具の充実が定住生活を支える好循環をもたらしたようです。定住生活には定住生活を強化する作用があって、一度定住生活に入ると遊動生活には戻りにくいラチェット(歯止め)がかかると考えられます。
ただ、最初の定住はこうした道具類の支えなしに始まったはずですからよほど条件の良いところで始まると予想されますが、考古学的な資料によると氷期が終わって最初にコナラなどの広葉樹が成立しはじめた鹿児島県南部で最初の縄文遺跡が発見されているようです。海の幸の力もあって土器や大きな石器を装備した縄文文化がこのあたりで始まったようです。
| 固定リンク
« 朗読の時間 | トップページ | 貯蔵資源の所有権 »
コメント