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2013年1月13日 (日)

アシュトン著 『産業革命』

T.S.アシュトン著、中川敬一郎訳 『産業革命』(岩波文庫)を読んでいます。「歴史的大転換を経済史の立場から実証的に平明に述べた名著である」と表紙にあって、多分平明に書いてあるのだと思いますが、イギリスの地名やら人名やら企業名やら団体名にうとい人間にとってはあんまり平明ではないですね。もともとイギリス人向けに書かれた本なので仕方ないことではあるものの、平明に説明するための具体例に馴染みがないとかえって難解になる事例ともなっています。

それでもウィキペディアをたよりに人名や地名を調べながら読んでいくと、産業革命の経過についてかなり詳しくなりますね。紡績機の発展やら、蒸気機関の改良の歴史やらもだいぶ頭に入りました。ニューコメンからワットまではボイラー製作の精度がネックになって減圧型の蒸気機関しか実用になっていなかった(高圧型にするとボイラーが爆発するので)のが、鉄生産と工作精度の向上によって、トレビシックやスチーブンソンの高圧蒸気機関への道が開かれ、蒸気機関で蒸気機関の燃料(石炭)を運べるようになったこと、低圧蒸気機関で産出・精製された石炭や鉄の存在がこの変化に必要であったことなど、様々な事柄が原因となり結果となることで全体のプロセスが進んでいったらしいことが伺えました。

この本が主に扱うのは1760年~1830年の70年間で、この間に農村から都市への人口移動が生じ、農業生産から工業生産への労働力移動が起きていった訳ですが、農場で働いていた人が直接工場で働くようになった訳ではないようですね。初期の紡績工場は大人の労働力を十分調達できず、悪名高い児童労働を大幅に採用することで生産を行うことができました。この子供たちが成長することで工場労働になれた大人の労働力が次第に増加していったようです。イギリスの場合は二世代かけて工場労働者が育成されたことになります。このプロセスを例えば30年ほどで行う後発国では、世代内で農業労働から工業労働への転換が必要になりますから困難はより大きいことが推察されます。

イギリスでは蒸気機関車による鉄道網が出来る前に馬車鉄道や運河による石炭の輸送が行われていました。運河の時代は30年ほどだったようですが、この期間に大規模な土木工事を行う経験と、それを実行する技術者層が育成されました。この技術者たちが蒸気機関車の時代に活躍することになったという指摘もなるほどと思いましたね。人材の育成という観点からすると、イギリスの産業革命と後発国の産業革命を比較するとずいぶん条件が違っているようで、なかなか興味深かったです。

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