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2013年4月15日 (月)

【再放送曲】 『塔の春』 (1971年)

今月は1971年と72年のお国めぐりシリーズが再放送されています。そのうち71年4月のうたが『塔の春』です。一度も聴いたことがない曲で楽しみでした。

♪ 五重の塔のすぐそばに
♪ いつも立ってる男の子

お国めぐりシリーズらしく、美しい児童合唱の歌声です。ミミミーソラレレー ミシシーシラー♪ というメロディに、

  ドミソラシ → レソラ

という和音の繰り返しが当てられています。ドミソのシックス・メジャーセブンスにレファラのサスフォー。幻想感のある和音と浮遊感のある和音の繰り返しが伴奏だけではなく、ミシシーシラーとメロディにも姿を表します。非常に凝ったつくりで、出だしから「おっ」と思わせますね。

浮遊感溢れる空間に佇む男の子。それは阿修羅の像でした。ということはこの塔は興福寺の五重塔なのですね。闘神らしからぬ丹精な顔立ちの男の子が、春の日差しの中で仏塔を見上げるさまが目に浮かびます。

二番では一条通りからうわなべこなべを経て西ノ京の薬師寺に舞台が移ります。「うわなべこなべ」って何のことかと思って検索してみたら宇和奈辺・小奈辺古墳のことでした。京都からJR奈良線で奈良に向かうとき、平城山駅と奈良駅の中間で左手に見える堀に囲まれた古墳のようです。万葉風の素敵な響きの名前ですね。

薬師寺の三重塔の上では、水煙の中で笛を奏でる飛天さまが塔を火災から守っています。笛吹童子というと、ひゃりーこひゃらりらのメロディが浮かんできますが新諸国物語の菊丸とは別人です。飛天さまの笛の音が桜の花びらと共に薬師寺金堂の屋根の上に舞い降りてきました。

♪ 向こうの山は信貴の山
♪ かすかに浮かぶ金剛山

信貴山はともかく金剛山は遠いですね。奈良の地名がふんだんに登場する作品です。作詞の鈴木貞子さんについて検索してみましたが作詞者としてヒットするのはこの作品だけでした。地元の一般の方の作詞ということなのでしょうか。土地の風景への愛着が伝わってきます。

金剛山を遠くに望む法隆寺五重塔。塔の下では、大勢の泣き仏たちがお釈迦さまの入滅を悲しんでいます。五重塔も三重塔の仏舎利を納めたストゥーパなんですよね。でも四月はお釈迦さまの誕生を祝う花祭りの月でもあります。奈良じゅうの寺院が華やぐ塔の春。春霞のようにゆったりたゆとうメロディにのせて、いにしえの奈良の都の風景にいざなってくれる作品です。

『塔の春』
作詞:鈴木貞子
作曲:南安雄
うた:杉並児童合唱団
映像:実写
初回放送:1971年4月

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コメント

もうお聴きになられたのでしょうか?
なかなか素敵な曲です。
格調が高い感じがしました。
音楽的には奥にメリシリーズの中でも屈指の名曲かと。
ただ、歌うのは難しいですね。
僕などは音をはずして、音痴になってしまいます。(恥)

投稿: るんるん | 2013年4月16日 (火) 18時03分

おかげさまで先週の再放送を聴くことができました。お寺のうたというとちょっと堅苦しいイメージがあったのですが、そんなこともなく、ゆったりした伴奏に美しいハーモニーで古都の春を歌った佳曲ですね。お気に入りの一曲になりました!

投稿: くじょう | 2013年4月18日 (木) 11時19分

玉葉06さま 長年曲名が不明だった曲を「みんなのうた 法隆寺」で検索して、たちまち「塔の春」という曲だとわかり、こちらにもヒットしました。この曲に共鳴し、こうして記録を残してくださった玉葉06さまに感謝です。残念ながら曲も映像もNHKのアーカイヴスに残っていないようで、おそまつですね。中間部の転調による緊迫感と幻想的なカノンも印象的な(だから聴いた当時小3だったぼくの耳と心に残ったのでしょう)名曲です。ぼくは、この曲と、男の子のノン・ヴィブラートの澄んだ歌声が印象的な「しらんぷり」という曲が「みんなのうた」史上双璧かと思います。あとは、大貫妙子さんの「メトロポリタン美術館」、それにこれも調べてみようと思いますが、ヴィヴァルディの「四季」のうち「冬」のラールゴ楽章に母親を想う歌詞をつけた曲(1975年ごろ)が印象に残っています。

投稿: 神々の雫 | 2016年3月29日 (火) 10時05分

神々の雫さま

コメントありがとうございます。『塔の春』の季節になりましたね。火曜日に広隆寺と龍安寺に行ってきたのですが、冬が過ぎて春の穏やかな空気に包まれてました。この曲の3拍子のリズムも春のゆったりした気分によくマッチしています。中間部のこだまが帰ってくるようなカノンも異空間と対話してるようで素敵ですね。よく考えられている作品で南都のお寺にも行ってみたくなります。映像は未発掘ですが、音声は発見されて2013年に再放送されてました。

ビバルディの冬は『白い道』ですね。こちらのシーズンはそろそろ終わりですけど、名曲なので機会があれば聴いてみてください。最近では今年の1月に再放送されてましたね。

投稿: くじょう | 2016年4月 1日 (金) 01時41分

「塔の春」。懐かしい歌ですね。
私が10歳の頃に「みんなのうた」で
聴いた曲ですね。あれから45年か・・。
当時は栃木県に住んでいて京都・奈良などは
遠い憧れの土地で歌でしかイメージ出来ない
頃でした。その後、中学校の修学旅行で関西方面に行くまでは
奈良へは行ったことが無い時代でした。
非常に懐かしい歌です。

投稿: 東京在住55才 男 | 2017年5月12日 (金) 09時40分

東京在住55才さま

コメントありがとうございます。リアルタイムで聴いてらっしゃったのですね。当時ですと、新幹線に乗るのも貴重な体験だったころで、関西もなかなか縁遠かったかもしれませんね。京都にいても奈良にいく機会は少なかったりしましたから。奈良の風景は落ち着いていて一層歴史を感じさせてくれます。この時期に行って見たいものですね。

投稿: くじょう | 2017年5月20日 (土) 13時14分

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