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2013年4月19日 (金)

【70年代のうた】『冬の日の子守唄』(1976年)

このところ『冬の日の子守唄』で検索して訪問してくださっている方がちらほらいらっしゃいます。37年前の、再放送もなかったと記憶している曲をなぜいま…という気もしますが、ありがたいことです。

♪ なぜ憶いだすのか 幼い日のことを
♪ あふれる陽の中で やさしいパパとママ
♪ なにも知らずに過ごした
♪ あのころ

沈鬱でうねるようなイントロが波乱のドラマを予感させます。「あふれる陽」「やさしいパパとママ」といった言葉から連想される明るい雰囲気はみじんもありません。どんよりと曇った心象風景が広がります。

♪ つるくさにからまり 左足くじいた
♪ 夏の日の夕暮 泣きじゃくったあたし

どこか挫折を暗示させる表現です。何かに足を取られて挫折してもやさしい両親は助けにくれません。光に満ちた夏の日は終わったのです。紅いバラも青い鳥ももう姿を消してしまいました。

このうたは堀江美都子さんのみんなのうた初登場の作品になります。『わたしのふるさと』『走れジョリー』など明るいうたが多い中で、この作品では澄んだなかに陰影のある歌声を披露してくださっています。

♪ 冬の日の浜辺に 十字架をたてよう
♪ 憶いで色をした 幼い日のために

「十字架」という言葉にどきっとしますね。再び帰ってこない楽しかった幼い日の記憶に立てる墓標です。「夏」が幼い日々の象徴だとすると「冬」は日々の暮らしに追われる現在ということになるでしょう。今の自分が幼いころの自分に手向けるレクイエム。それが『冬の日の子守唄』なんですね。

この歌を聞いたのは、中学2年の秋になります。17:55-18:00の放送時間帯はもう真っ暗で、その中をラジオでこの歌を聞きながら夕刊を配っていたものです。再び帰らないあの頃にタイムスリップさせてくれる貴重な作品でもあります。

原曲は' Io Con Chi Sto'(わたしは誰と一緒に?)というタイトルのイタリアの曲です。ゼッキーノ・ドーロという子供のうたフェスティバルの1973年の入賞作品です。今でもオンラインで購入できるので原曲を聞いてみたところ、テンポはだいぶ遅いものの、まさしく『冬の日の子守唄』でした。イタリア語の歌詞がわからないのが残念ですけど、ゼッキーノ・ドーロにこんな陰鬱なメロディと幼き日々へのレクイエムをテーマとした曲が出品されて入賞していたのは、ちょっとした驚きです。


『冬の日の子守唄』
作詞:A.テスタ、訳詞:仲倉重郎
作曲:G.マルゴーニ
うた:堀江美都子
編曲:福田和禾子
映像:スチール
初回放送:1976年10月-11月

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コメント

ゼッキーノ・ドーロ入賞曲というのは驚きです。
子どもの歌とか思えないしっとりとした大人の歌ですからね。
良くお調べになっておられることに今さながら敬意を表します。

投稿: るんるん | 2013年4月19日 (金) 08時10分

楽譜集に原曲のタイトルが載っていたので検索してみたところ、意外な事実が判明しました。ゼッキーノ・ドーロの曲だったとは…

http://ja.m.wikipedia.org/wiki/ゼッキーノ・ドーロ
http://www.geocities.jp/ezokashi/zakki04.html

といったページに確かに載っています。『44ひきのねこ』とか『自動車になったカメの歌』といった他の曲と比べると異色ですね。『ピエロのトランペット』のテイストに似てるかもしれません。

投稿: くじょう | 2013年4月19日 (金) 09時52分

この歌は私も聞き、また映像も見ました。確か、一人の少女の様子を静止画像で表現してました。

当時、私は「あの堀江美都子が『みんなのうた』に出演」と聞き、ワクワクしてました。何しろ当時の堀江は多数の主題歌(アニメ・特撮どころか時代劇なども)を歌っており、特に放送された1976年10月からは、堀江の代表作『キャンディ・キャンディ』が開始された時期でもあり、その上、『宇宙鉄人キョーダイン』という特撮番組にもレギュラー出演してました(当時の私は『マシンハヤブサ』『スターに挑戦!!』といった裏番組を見ており、とちテレの再放送で拝見した)。そんな堀江の歌という事も有って、いざ聞いてみると、アニメ主題歌の様な明朗さは無いものの、とても素晴らしい歌でした。

当時は堀江所属のコロムビアからレコードは発売されましたが、最近のCDには収録されてません。そういえば楽譜集にも著作権関係で削除されてます。いくらいい歌とはいえ、著作権次第でこうなるものですね(空しいなァ)。

投稿: マーチャン2 | 2013年4月19日 (金) 11時11分

このころの作品については、あまり映像の記憶がないんですよね。ラジオで録音はしたものの、テレビでは見なかったのかもしれません。17:55-18:00の時間帯は夕刊を配ってましたし、朝の放送は学校に行ってましたから。夏休みや冬休みの時期なら見てるんですけどねえ。少女の心象風景を描いたスチール写真集、見てみたいです。

個人的には堀江美都子さんを「アニソンの女王」として認識するようになったのは、だいぶあとの話になります。当時は『冬の日の子守唄』や『わたしのふるさと』の歌い手だと思ってました。

投稿: くじょう | 2013年4月20日 (土) 12時19分

ブログ主様
この歌の原歌詞は、親が離婚寸前で嘆いている子供の歌です。なぜかイタリア語原詞を逐語訳したものが存在していますのでご紹介いたします(pdfファイルです)。
http://ci.nii.ac.jp/els/110001163916.pdf?id=ART0001422090&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1382008206&cp=
作詞者のアルベルト・テスタはサンレモの常連ミュージシャンでもあったそうですが、含蓄や思索に富んだ哲学的で優れた歌詞を多く書いた人です。この歌には「パパ」「ママ」という単語が一切出てこないのにもかかわらず(あ、原詞のほうです)、両親の離婚がテーマになっていることがはっきり理解できることからも、彼の作詞の能力の素晴らしさが分かります。テスタさんがものしたほかのゼッキーノ・ドーロ歌曲もご覧になるとその詩の味わい深さが分かりますよ。みんなのうた関連では『自動車になったカメの歌』など。1990年代の『E nelle onde che baraonde』『Amico nemico』といった歌においても(これらは日本には紹介されていませんが)その作詞の敏腕さは衰えていません。
グワルティエロ・マルゴーニさんもいいメロディを書いた方です。1974年のゼッキーノ・ドーロ出場曲である「チリビリコッコラCiribiricoccola」は同年のイタリアのヒットチャートの上位に食い込んだとか。当方は1991年ゼッキーノ・ドーロの出場曲「Il piu' grande motore」の美しさに涙します(むろん歌詞の内容あってのことですが)。
堀江さんのことは全く知りませんが、原曲がこれだけ素晴らしいかたがたによって作られたのだから素晴らしい曲になるのもむべなるかなという気は致します。日本語訳詞は原詞の内容を伝えていないという歯がゆさはありますが、この内容をストレートに訳してしまっては当時の日本では決して受け入れられなかったでしょう。仲倉さんの訳出は悪くはなかったのかもしれません。

投稿: 日本唯一のゼッキーノ・ドーロおたく | 2013年10月17日 (木) 20時46分

日本唯一のゼッキーノ・ドーロおたくさま

貴重な、そして衝撃的な情報をありがとうございました。『冬の日の子守唄』が両親の離婚をうたった曲だったとは……。これは、想像もしていませんでした。ひょっとしたら、死別のうたなのかなと思ったことはあるのですが、両親とも死別では悲しすぎるので却下していました。でも離婚というのはチラッとも考えてませんでしたね。「みんなのうた」1320曲の中でも扱われてこなかったテーマですから。

でも両親が離婚したのだと思ってきくと、すべてつじつまが会います。陰鬱なイントロ。「何も知らずに過ごした」という歌詞。歌わなくなった青い鳥。そして冬の日の浜辺に立てられた十字架…。' Io Con Chi Sto'(私は誰と一緒に)という原曲のタイトルも納得です。イタリア語の素養があれば原曲をきいたときにわかったかもしれませんが、おかげさまですべての謎が解けました。ありがとうございます。

CiNiiにゼッキーノ・ドーロを論じた論文があるのも知りませんでした。こういう研究をされてる方もいらっしゃるのですね。アルベルト・テスタさんがなぜこのような作品を書いたのかもこの論文で了解しました。子供たちが世界の真実を知ることも必要だという信念。大人たちに子供の悲しみを伝える必要があるという使命感。このような哲学にもとづいて書かれた作品だったとは…。何か曰くがありそうな作品だとは思っていたのですけど、予想外に深みのある作品だったのですね。

「みんなのうた」もこのころから30年がたち、『ママの結婚』のように両親が離別した娘さんを描いた作品が反響を呼んだりもしています。『冬の日の子守唄』もリメイク版が可能な時代になってきているのかもしれませんね。

投稿: くじょう | 2013年10月18日 (金) 22時26分

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