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2015年4月29日 (水)

【再放送曲】『はさみとぎ』(1965年、1974年)

【再放送曲】『はさみとぎ』(1965年、1974年)

『アスタ・ルエゴ』と一緒に『はさみとぎ』の1974年版を再放送してますね。1965年版はユーキャンのDVD(第3集)に入ってますし「なつかしのみんなのうた」でも放送してましたが、1974年版は失われてしまっていたようです。今回、発掘プロジェクトの成果として41年ぶりの再放送となりました。

♪ きょうも朝から 口笛吹いて
♪ 陽気なぼくは はさみとぎよ


非常に陽気かつシンプルなメロディーですね。ソドドシラシシ♪ の動機を4回繰り返し、それを2反復して終了です。動機を繰り返す度に最高音がド→シ→ラ→ソと下がっていくのは芸が細かいところで、はさみが段々研ぎ上がっていくのを表しているようです。

65年版も74年版も友竹さんと杉並児童合唱団のうたですが、74年版のオープニングの口笛には少しタメがあります。どなたが口笛を吹いてらっしゃるんでしょうかね。

映像も同じく久里さんの担当ですが、65年版は白黒、74年版はカラーでアニメーション技術の進歩を受けた映像のリメイクが主な目的だったのかもしれません。相違点をあげてみましょう。

・主人公のはさみとぎ屋さんは65年版はふとっちょで74年版はやせ気味
・65年版では最初は店舗で回転砥石を回し、5番の街から街へ♪になって手押し車で移動を始める。74年版は最初から手押し車で登場。店舗を構えていないようだ。
・65年版では回転砥石の側面ではさみを研いでいるが、74年版では円周面で研いでいる。
・手押し車に傘がついてはさみが吊るしてあるのは共通。74年版の傘に「はさみ」と書いてあるのが印象的。これはなんとなく記憶にある。
・植木を切ると切った先が天に昇っていくのは共通。久里さんが好きそうな表現。

映像技術を除けば、店舗メインか手押し車メインかが主な違いで、店舗メインの主人公がふとっちょで手押し車メインの主人公がやせ気味なのは運動量の違いなのでしょう。実際、scissors grinderで画像検索してみるとやせてる人が目に付きます。

【再放送曲】『はさみとぎ』(1965年、1974年)

74年2-3月のテキストには「西洋はさみをとぐのに使う、といし、はこちらのと違います。それをうっかりまちがえて、失敗したこともありました」という注釈が載っています。テレビを見てくださいとことですが、65年版と74年版では回転砥石自体に違いがあるようには見えません。違うのは研ぎ方で、側面研ぎから円周面研ぎが修正事項だったようですね。

♪ 大きなはさみ 小さなはさみ
♪ 床屋のはさみ 植木ばさみ


「ハサミ研ぎ」で検索すると理容師や美容師用ハサミや剪定バサミ、医療用ハサミなどを研ぐ職人さんの広告が沢山出てきます。一般消費者がはさみを研ぎに出すことは今ではまずない気がしますが、業務用ハサミの分野では現在でもハサミ研ぎは重要なお仕事なんですね。

原曲はイタリア民謡となっていますが、原曲についての情報はほとんどみつかりませんでした。「世界の民謡・童謡 はさみとぎ 」によると、原曲については「その存在が疑われるほどに情報が得られない」ということです。確かに「はさみとぎ」をイタリア語に翻訳して「Il macinino di forbici」で検索してもそれらしき歌は出てきません。

その代わり、上記サイトには『The Scissors Grinder』という英語の歌が紹介されています。聴いてみるとこれはまさしく『はさみとぎ』そのものでした。この曲は1958年の作品で一部にイタリア語の歌詞が使われています。この『The Scissors Grinder』が「イタリア民謡」と誤解されて1965年版の『はさみとぎ』になったのではないか、というのが上記サイトの見立てですが、そんな気もしますね。

♪ さあさどしどし まかせておくれ
♪ お金はあとだ しごとがさきだ!


6番までの歌詞のうち2番、4番、6番と半分まではこのセリフで終わっています。この主人公の決め台詞でありキャッチフレーズですが、後払いでいいと言ってるだけのセリフをなぜこんなにドヤ顔で繰り返すのか、昔から疑問でした。当時はそんなに前払いで仕事をする人が多かったのでしょうか? 原歌詞を探していたのはこの謎を解くためでもあったのですが、『The Scissors Grinder』には次のような一節があるそうです。

I know you have no lira
but bring your scissors to me
Today you may have nothing
tomorrow you can pay !


リラがなくてもはさみを持っといで。今日は何もなくても明日は払えるんだから、といった意味でしょうか。これは凄いですね! はさみが切れるようにようになったら、それで稼いでそれからお代を払ってくれればいいと言ってる訳ですから。ここまでお客を信じて太っ腹だとドヤ顔なのも納得です。みんなニコニコしてるのも分かりますね。


『はさみとぎ』(1965年版)
作詞:中山知子
作曲:イタリア民謡
うた:友竹正則、杉並児童合唱団
編曲:小森昭宏
動画:久里洋二
初回放送:1965年4月、5月

『はさみとぎ』(1974年版)
作詞:中山知子
作曲:イタリア民謡
うた:友竹正則、杉並児童合唱団
編曲:小森昭宏
動画:久里洋二
初回放送:1974年2月、3月

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コメント

いろいろ研究されましたね。特にイタリア民謡かどうかが怪しいという記述が興味を引きました。中山知子さんは数多くの訳詞をなさっておられますが、原曲がどこの国なのかはっきりしないことは『夢をのせて』でも同じことが言えるようです。なお『夢をのせて』は音楽の教科書に掲載されていた曲であり「みんなのうた」とは関係ありません。

投稿: るんるん | 2015年4月29日 (水) 14時54分

おかげ様でこの曲を録画、更に「なかよしファミリー」も録画し、「ほんにうらうら」・「けしゴムのうた」・「トットトコ」も録音できました。

この曲も、同じ久里が双方手掛けた「クラリネットこわしちゃった」同様、リバイバル版が初見であり、元祖モノクロ版は歌は懐かしくてもイメージが湧きませんでした。それが41年振りに拝見出来て良かったです。もっとこんな映像が見たいです。
(因みにリバイバル版放送当時には、「今日の日はさようなら」や「デンデン虫のデン子さん」が放送していた。懐かしいなァ)

投稿: マーチャン3 | 2015年4月29日 (水) 19時46分

この歌について調べたら、「これかな?」と思えるものを発見いたしましたのでご照覧いたします。
ttp://www.pedagogich.it/downloads/canzoncine_web.pdfの27ページです。
楽譜もありますので「はさみとぎ」や『The Scissors Grinder』の旋律と比較できます。楽譜に「ロンバルディア州やヴェネート州の民謡」と表記が添えてありますから、イタリア民謡であると判ります。
ここからわかることは、この『E gira che te gira』と『The Scissors Grinder』とはリズムがほぼ同じと言ってもよいこと、またメロディーは全体的には似ているものの一部が異なっている点が挙げられます。
歌詞も確かに砥石のことを歌っていますね。ざっくり訳してみましたが、参考程度にとどめて精確さは期待しないでください。
 
 回れや回れ、哀れな砥石
 一リラ稼ぐにゃ存分に回してやらにゃいかん
 哀れな砥石に付いて働かにゃいかん
 forbeseta(鋏?)を持っといで、研いであげるよ持っといで!

 回れや回れ、哀れな砥石
 一リラ稼ぐにゃ存分に回してやらにゃいかん
 細くきれいに書くために鉛筆をとがらせたけりゃ
 ナイフを持っといで、研いであげるよ持っといで!

この歌が『The Scissors Grinder』の原曲だとすると、訳詞者(歌っているBob and Louise Decormierかもしれませんが、そうとは限りません。私はこの手で人が散々他人を騙しているのを見てきているので、歌の訳者や作者については普段から疑いを持って調べています)はかなりオリジナルの歌詞に書き換えてしまっていますね。
それであっても、イタリアの歌かもしれないという根拠があっただけでも良しとしてよいのではないでしょうか。

投稿: 日本唯一のゼッキーノ・ドーロおたく | 2015年5月 1日 (金) 00時31分

日本唯一のゼッキーノ・ドーロおたくさま

貴重な情報ありがとうございます。確かに『E gira che te gira』のメロディーラインはほとんど『はさみとぎ』と同じですね! 「世界の民謡・童謡」のサイトでは『The Scissors Grinder』は『ケ・セラ・セラ Que Sera, Sera』のパロディーでは、という指摘もありましたが、もともとE gira che te giraという歌詞で始まっていたのを、そのまま生かしてあるのが真相なのでしょう。

これが原曲だとするとイタリア民謡で問題ないことになりますね。もともとは回転砥石の視点で「研ぎ屋さん」の悲哀を歌った曲だったのかもしれません。これが『The Scissors Grinder』で太っ腹のはさみとぎ屋さんの話に翻案され、さらに中山さんが6番までの陽気な日本語詞をつくられたというストーリーがみえてきます。ありがとうございました!

投稿: くじょう | 2015年5月 2日 (土) 17時02分

マーチャン3さん

今月は発掘曲がたくさん放送されて良かったです。『けしゴムのうた』が超児童合唱だったのにびっくりしました。あそこまで合唱曲の作品も珍しい気がします。自分が最初に見たときのバージョンが見られるのはいいですね。『ゴクロウサン』も早くみてみたいものです。

投稿: くじょう | 2015年5月 3日 (日) 07時53分

るんるんさん

そんなわけで『はさみとぎ』はもとはロンバルディア地方のカンツォーネだったようです。シカゴのはさみとぎ屋さんを取材したらイタリア出身だったという新聞記事があったりもしますので、イタリア系の移民がアメリカに持ち込んだ曲が翻案されてさらに日本に伝わったというのがありそうなストーリーでしょう。別の国にワンクッションおいて伝わると元の国が分かりにくくなりがちですね。『夢をのせて』は自分も音楽の時間に習いました。二部合唱の下のパートを歌った記憶もあるのですが、合唱部分の編曲はるんるんさんのバージョンとは違っていたようです。音楽のテキストのレベルでもいくつかバージョンがあるようですね。

投稿: くじょう | 2015年5月 3日 (日) 08時10分

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