初対面信頼とGDP内訳
一人当たりGDPの内訳についてみてみました。先進国では第3次産業の占める割合が高く、中でも金融・不動産等が一人当たりGDPの半分に達していました。他方、新興国や途上国では金融・不動産等の占める割合はずっと小さく、途上国では2割程度にとどまっています。他方、第1次産業は先進国でも途上国でも一人当たり生産額はあまり変わらず3~6万円程度でした。その結果、途上国では第1次産業が一人当たりGDPに占める割合が11%と比較的高くなる一方で、先進国では2%程度と小さくなっています。
次に初対面信頼とGDP内訳との関係を見ていきましょう。世界価値観調査第5波の初対面信頼のデータとGDP内訳のデータの両方がそろっている国は少なくて24ヶ国しかありませんでした。それでもある程度の傾向は見て取ることができます。(ちなみに日本は初対面信頼のデータがないので以下の分析には登場しません)
初対面信頼との相関係数を見ると、金融・不動産等が最大で0.76となっています。以下、運輸・通信等の0.73から流通・飲食等の0.68まで0.7前後の値が続き、製造業が少し下がって0.65、農林水産業が大きく下がって0.47となりました。これから、初対面信頼と最も関連が深いのは先進国で特に割合も絶対値も大きい金融・不動産等で、その他の第3次産業や第2次産業がこれに次ぎ、第1次産業は初対面信頼とは最も関連が薄いということがいえそうです。
この関係を散布図にして確認してみましょう。初対面信頼と一人当たり第1次産業生産額の散布図はこのようになります。横軸が初対面信頼でプラスならどちらかというと初対面の相手を信頼することを示し、マイナスならどちらかというと信頼しないことを示します。縦軸が一人当たり第1次産業生産額で単位はドルです。
図のように、初対面信頼と一人当たり第1次産業生産額にははっきりした関連は見られません。一人当たり第1次産業生産額自体、国による違いがあまり大きくなくて中国や韓国、ロシアとアメリカやスイスといい勝負ですし、イギリスやドイツはやや低くなっています。ただ、初対面信頼が高いオーストラリアやフィンランドの一人当たり第1次産業生産額が高めになっている分、0.47の相関となっているようです。(この2国をはずすと0.30の相関)
初対面信頼と一人当たり第2次産業生産額との散布図は上のようになります。これははっきり右上がりの配置となり強い正の相関が見られます(r=0.70)。一人当たり第2次産業生産額は途上国・新興国と先進国の間に明瞭なギャップがあり、途上国・新興国では初対面信頼が低く、先進国では初対面信頼が高い傾向があるのが強い正の相関が見られる原因でしょう。
ただし、それぞれのグループについてよく見ると先進国のグループの中では初対面信頼と一人当たり第2次産業生産額の間にやかり正の相関が見られるものの(r=0.50)、途上国・新興国グループの中では負の相関が見られます(r=-0.67)。初対面信頼と第2次産業との関係は単純なものではないのかもしれません。
同様の関係は初対面信頼と一人当たり第3次産業生産額との間でより明瞭に見られます。途上国・新興国グループと先進国グループとのギャップは第3次産業でより大きくなり、そのため初対面信頼と一人当たり第3次産業生産額の相関係数はr=0.75とより大きくなりました。
一方、先進国グループの中では初対面信頼と一人当たり第3次産業生産額の相関係数はr=0.66で依然として正の相関が見られるものの、途上国・新興国グループの中ではr=-0.70の強い負の相関となっています(ちなみに、韓国は第2次産業では先進国グループに入りますが、第3次産業については新興国のグループに入るようです)。
途上国・新興国と先進国では初対面信頼と一人当たりGDPの関係が特に第2次産業、第3次産業については異なっているようですね。そしてこの傾向は第3次産業の方が顕著です。途上国・新興国の段階では第2次、第3次産業の発展による経済成長のプロセスは初対面信頼を阻害する方向に働くのかもしれません。
他方、第3次産業がGDPの主流を占めるようになる先進国では、第3次産業の発展が初対面信頼を改善する方向に働くようにみえます。あるいは初対面信頼の向上が金融業やサービス業の発展を促すのかもしれません。これらの点について確認していく必要がありそうです。
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