みんなのうた60 AIスペシャルの続きです。「気持ち」を表す語句と曲名の対応を一覧表にしてみました。番組では順位が示されていましたが、ここでは1位を5点、2位を4点…などの形で得点に換算してあります。

こうすると『月のワルツ』は「好き」ポイントが5点、「不思議」ポイントが4点とか、『メトロポリタン美術館』は「好き」が4点、「楽しい」が4点、「懐かしい」が3点、「不思議」が3点だった、とか解釈することができるようになります。『月のワルツ』は不思議な世界観が好きだったという思い出が多かったようですね。『メトロポリタン美術館』は「不思議」「楽しい」「好き」「懐かしい」といった、多様な感情を喚起する作品だったようです。
気持ち得点の合計を求めてみますと、『メトロポリタン美術館』が14点で1位、『WAになっておどろう』が10点で2位、『月のワルツ』と『太陽と月の子供たち』9点で3位タイとなります。『WAになっておどろう』は楽しくて元気が出て笑顔になれる曲、『太陽と月の子供たち』は優しい気持ちなって元気が出て好きだった曲となりそうです。それぞれ納得できる気がしますね。
元データがあれば、もっと多くの曲についてこういう特徴づけができるのですが、放送で紹介されていたデータからだけでもこんな分析をすることができました。
表は省略しますが、学校に関する語句を加えて同様の一覧表を作成してみました。そして合計ポイントが上位の曲について語句との関連や曲と曲との関連を双対尺度法という方法で視覚化してみました。双対尺度法はザックリいうと似たパターンをもつ曲や語句を近くに、似てない曲や語句を遠くに配置する方法で、テキストマイニングするときの定番の分析方法です。
その結果が次の図になります。

ちょっとごちゃごちゃしていて見づらいですが、右上の方に「笑う」「元気」「楽しい」といった語句が並んでいて互いに関連が深いことを示しています。もう少し、真ん中よりには「不思議」「好き」「小学校」「懐かしい」といった語句も見られます。『まっくら森の歌』『メトロポリタン美術館』『月のワルツ』はこの近くに位置していますね。小学校のころ好きだった、懐かしい不思議ソングということになるでしょうか。
左の方には「クラス」「先生」「卒業」といった学校生活を示す語句が並んでいます。「中学校」がここの近くにあるのが興味深いですね。『YELL』や『手紙』のような学校生活が一番実感されるのが中学生時代ということかもしれません。
『それ行け3組』『せんせ ほんまにほんま』『ありがとう・さようなら』は小学校時代を扱った楽曲なのですが、学校生活のカテゴリーとして思い出に残っているようです。「小学校」という語句は「小学校のころ好きだった曲」という意味合いでも使われるせいか『メトロポリタン美術館』や『北風小僧の寒太郎』の近くに位置していますが、『それ行け3組』とかはまた違った記憶への残り方をしているのでしょう。
図の右下方面に目を転じると「優しい」「幼稚園」という語句があり、『お弁当ばこのうた』が対応しています。子供が幼稚園のころ作った優しい思い出に結びついているのでしょうか。
さらに右下に離れて「泣く」があります。他の気持ちと比べて涙の要素がかなり異質であることが伺えます。この図で対応しているのは『きっとしあわせ』で、子育てに追われる慌ただしい日々のなかで、子供が生まれたときの感動を思い起こす曲でした。いっとき、ものすごい勢いで連続して再放送してましたね。確かに泣いてしまう親御さんも多かったことでしょう。子供が生まれるという、人生の大きな節目を思い起こさせる感情で確かに他の気持ちとは異なっています。
この図にはあがっていませんが、『こだぬきポンポ』や『小犬のプルー』も「泣く」に対応する曲でした。これらは別れという人生の大きな出来事を扱っています。番組では『エレファン』も紹介されていましたね。これもまさに永遠の別れをテーマにしています。「泣く」というのは冠婚葬祭級の人生の大きな出来事に結びつく感情で、そういう意味で「楽しい」とか「笑う」とかとは違った別格な位置づけになっているのでしょう。
その中でも子供の誕生は大きなウェイトを占めているようで、「優しい」や「幼稚園」が「泣く」に近い方向性をもっているのは、そのためなのかもしれません。子供や孫の誕生とともに両親や祖父母の世代が繰り返しみんなのうたの世界に立ち返ってきているさまを、右下の語句たちは示している可能性があります。
以上、少ないデータをもとにやや強引に推論してみましたが、元データをつかってきちんとテキストマイニングすれば「みんなのうた」には大きく次の3つの側面があると、もう少し自信をもっていえるようになるかもしれません。「みんなのうた」は元気で楽しくときに不思議な子供たちのうたであるとともに、それは学校生活の友であり、人生の節目節目に寄り添う人生の伴走者でもあると。
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